帝王切開によって生まれた新生児を出生時に母親の膣液に曝露すると、経腟分娩で生まれた新生児とよく似た微生物叢(ヒトの体に生息している微生物集団)が発達することが明らかになった。分娩の方法は新生児の微生物叢を決定する大きな要因の1つだが、この予備研究は、帝王切開による分娩でもある程度は腟内微生物を回復できることを示している。
膣液中に存在する微生物は、新生児が生まれるときに皮膚や口腔、消化管に定着し、これらが集まって微生物叢を形成する。この早い段階での微生物曝露と微生物の定着が免疫系の発達を左右し、それ以降の代謝や免疫機能に大きな影響を及ぼす。国によっては帝王切開での出産が50%を超えるが、生まれた子はすぐには腟内微生物に曝露されず、出生時の微生物叢が経膣分娩で生まれた子とは違っている。
Maria Dominguez-BelloやJose Clementeたちのグループから、4人の新生児に行った腟内微生物移行と名付けた新しい方法の報告が寄せられている。帝王切開に先立ってガーゼをそれぞれの母親の腟内に1時間入れておき、分娩後すぐに、このガーゼで新生児をこすって膣液を塗りつけた。その後、この4人の新生児の微生物叢を、膣液曝露を行わなかった7人の帝王切開分娩児、7人の経膣分娩児と比較した。すると出生後30日の時点で、膣液曝露を行った帝王切開分娩児の微生物叢は、曝露を行わなかった帝王切開分娩児の微生物叢よりも経膣分娩児の微生物叢の方に似ていた。
ただし、この腟内微生物移行は完全ではなく、経膣分娩で生まれた新生児に存在する微生物が全て移行されてはいないことが分かった。また長期的な臨床経過は調べていないため、腟内微生物への曝露が、微生物叢の構成や新生児の健康状態に対して何らかの長期的影響をもたらすのかどうかは、不明である。
同時掲載のNews & Views記事でAlexander Khorutsは、この報告の著者たちは「新生児に相棒となる微生物群を導入して一生にわたり健康的な共生関係を築けるようにする、そんな積極的な介入方法の開発に向け、最初の重要な一歩を踏み出した」と書いているが、その上で標本数の少なさや研究期間の短さといった弱点も指摘している。
DOI:10.1038/nm.4039 | 英語の原文
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
引用元:
帝王切開で生まれた新生児を腟内微生物に曝露(Nature Asia)