デング熱やウエストナイルウイルスなどと同様、蚊が媒介となって感染するジカ熱。ここ数ヶ月、中南米を中心に猛威を振るうこのウイルス、ワクチンはありません。感染しても大事には至りませんが、妊婦は別。正しく知って感染を食い止めましょう。

各テレビ局も、注意喚起
NHKなどの主要メディアは昨日、昨年5月のブラジルでの発生が発端と見られるヒトスジシマカ(蚊)媒介性のウイルス「ジカ熱(Zika fever)」が、過去数ヶ月にわたって中南米を中心に広がっている件で、WHOが声明を発表したことを受け、「今後も流行が拡大するおそれがある」として、
中南米やアメリカに暮らす人たちだけでなく、日本からこの地域に渡航を予定している人たちにも予防策を徹底するよう、一斉に注意喚起しました。
症状は比較的軽いが新生児に小頭症が出る
ウイルスの潜伏期間は数日で、発熱・発疹・関節痛・白目の充血などの症状が現れ、2〜7日でおさまります。感染者の8割には自覚症状が出ません。

しかし、ブラジルではジカ熱に感染した母体の影響と考えられる新生児の小頭症(脳が十分に発達しない神経障害)が昨年7月頃から3,893件報告されたとのことで、ブラジル保健省は「妊娠しないように」という異例の通達を出しました。

「妊娠は極私的な問題ですが、このような状況下では絶対に推奨できかねます」と、感染の中心的地域ヘルナンブコ州の小児科医。

新生児の小頭症は2014年は147件しか報告されていなかったのに、2015年は一気に2,400件に激増し29名が死亡、6州が非常事態を宣言しました。小頭症とジカ熱との関連性については今現在も調査続行中です。

多い蚊媒介性ウイルス…判別は困難
専門家によりますと、ジカ熱は、デング熱(Dengue)、チクングンヤ熱(Chikungunya)など、湾岸地域で感染が懸念されるもののうちでは最も出生率に影響を与える脅威とのことです。

今に始まったウイルスではなく、1947年にアフリカのウガンダで、アカゲザルからウイルスが検出されて人に感染し、アフリカの一部地域で繰り返し流行してきました。
ジカに加え、この2〜30年間、テキサスやフロリダ、ハワイなどで、激しい痛みと出血、ショック死を伴うデング熱も流行していますし、また、フロリダやプエルト・リコ、ヴァージン諸島でもここ数年間、関節の痛みから衰弱に至らしめるチクングンヤ熱が流行しています。

さらにウエストナイルウイルス(west nile virus,WNV)も、アメリカ全土で流行中です。慢性的な腎臓疾患や神経系統の障害を引き起こします。これらすべてが蚊が媒介となるうえ、症状も似通っていますので、ジカ熱だと診断することは極めて困難です。

ワクチン、治療法なし!
問題は、現段階でこれらに有効なワクチンや治療法がまったくないことです。

メキシコでは最近、デング熱用のワクチンが認可されましたが、アメリカや日本ではデング熱や他の蚊媒体性の感染症に対するワクチンは何もありませんので、「かからない」こと、すなわち予防が最も重要なのです。

アメリカ人のジカ熱感染者はすべて旅行中に感染していることから、ウイルスが広がりつつある地域に足を踏み入れないことが重要とし、疾病対策予防センター(The Centers for Disease Control and Prevention)は今月、妊娠中の女性に対し、小頭症の子どもが生まれる危険性があるとして、メキシコやプエルト・リコなどジカ熱が広がっている22ヶ国への旅行の延期を勧める声明を発表、当該地域から帰国した妊婦を対象としたスクリーニングも同時に行うとしました。

また、先週末には、コロンビアなどへ旅行した英国人3人への感染が確認されており、ヨーロッパで猛威を振るう危険性があります。
すでにブラジルでは首都サンパウロや、ものの数ヶ月後にはオリンピックが開催されるリオデジャネイロなどの大都市圏を巻き込んで広がり続けており、今現在、北中南米でヒトスジシマカが見つかっていないのはカナダ、チリのみという危機的状況です。WHOは、北中南米の全ての国で感染が広がる可能性があるとしています。

媒介蚊の種類と対策

ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)
日本では「ヤブ蚊」とも。ジカのみならず、デング、チクングンヤすべての媒介者として最大の脅威です。
アメリカ中南部、アフリカ各地、オーストラリア、南アジアで大量に発生します。
日本では、人家周辺、 山間部を除く東北以南では庭先で執拗に吸血に来ます。人工容器と樹洞のような小さい水域に発生。昼間吸血性で、人の血への嗜好性も強いという厄介な蚊です。

ネッタイシマカ(Aedes aegypti)
日本では「ヤブ蚊」とも。国立感染症研究所によりますと、日本でも沖縄などでは発生する可能性があり、注意が必要です。

アカイエカ(Culex mosquitoes)
WNVの媒介者としてアメリカ全土で確認されています。
人家に隣接した汚水溜め、 排水溝、 動物舎の側溝など、 よどんだ水溜りや 庭先の忘れ去られた水がめなどで発生し、人の血に対する嗜好性も強い。日本でも、水田から発生する代表的な蚊であるコガタアカイエカは日本脳炎を媒介することで有名です。
虫除けスプレー使って、窓は開けないで。
回避術ですが、ほとんどのケースは虫除けスプレーで回避可能です。

冬の乾燥した環境は蚊が発生しにくいと考えられるため、安心している人が多かったのですが、アメリカ南部では1月でも華氏50〜60度になることも珍しくなく、すぐにウイルスが複製されてしまうと専門家は指摘。

暑い日は窓を閉めてエアコンをマックスにすれば(環境には悪くても)感染はかなり防ぐことができます。
デング熱の感染率が高かったフロリダ州キーウエストでは、暑い日に窓を開け放つ人が多かったため感染率が高くなったと考えられるのです。

また、人家近くに水溜りがあるなら除去すべきです。

地面が乾燥すると、蚊の幼虫は死に絶えます。外で皮膚を露出しないのが重要なのは当たり前ですが、夏は実際、無理ですよね…虫除けスプレーも農薬と同じ成分(ディート.DEET)が使われていますので、安全と言い切れないのが現状ですが、分量をわきまえて使用する分には大きな影響はありません。

《参照》

Zika virus-who.int
Zika virus to spread to all but 2 countries in the Americas, WHO predicts-edition.cnn.com
Brazil warns against pregnancy due to spreading virus-edition.cnn.com
How to keep away mosquitoes carrying Zika, dengue-edition.cnn.com
ウエストナイルウイルス媒介蚊の生態-国立感染症研究所
ディート (忌避剤) に関する検討会 – 厚生労働省


引用元:
ジカ熱警報発令中!日本上陸も時間の問題か。(imedi)