乳がんは早期に見つけて治療すれば高い生存率が見込める。先進国では、早期発見のため、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)検診を行うのが標準だが、40代の検査精度がやや落ちることが課題になっている。克服を狙った長期・大規模研究が国内で進行中だ。昨年から有望な結果が出始めており、注目されている。

 ◆不利益無視できない

 昨年10月、全米がん協会は、それまで「40歳から毎年」としてきたマンモ検診の指針を「45歳から毎年、55歳からは2年に1回」と改めた。米国では別の専門家作業部会も乳がん検診について、40代に一律にマンモを勧めることに否定的な見解を発表した。両者とも、40代の特に前半では「検診による不利益が無視できない」との判断が根拠になった。
マンモは、乳房を片方ずつ板状の器具で挟んで薄く引き延ばし、エックス線を当て病変を調べる検査。しこりになる前の非常に小さながんを検出して早期治療を可能にしたことから、欧米では高い検診受診率と相まって乳がん死亡率の低下に貢献したと評価される。現時点でも「死亡率を下げる効果が証明された唯一の乳がん検診法」(大内憲明・東北大教授)だ。

 ◆検診開始・間隔変えず

 だが、欧米での数十年にわたる実践で課題も明らかになってきた。検診で「がんの疑い」とされた後、針を刺して組織を取るなどの精密検査で異常なしと分かる「偽陽性」が少なくなく、受診者の負担が大きい。また、乳腺組織の密度が濃い「高濃度乳房」の人は検査の精度が落ちる。若年世代には高濃度乳房が多い。

 NPO法人乳がん画像診断ネットワーク理事長、戸崎光宏・相良病院付属ブレストセンター放射線科部長によれば、マンモでは乳腺もがんも白く写るため、がんが濃い乳腺組織に囲まれていると見つけにくいという。
日本では、厚生労働省が、市町村などが行う検診について「40歳から2年に1回」のマンモを推奨してきた。同省検討会は昨年、推奨を一部見直したが、検診の開始年齢と間隔は変えなかった。

 背景には、欧米では高齢になるほど乳がん罹患(りかん)(発症)率が増え、40代は比較的少ないのに対し、日本は40〜50代がピークで受診率は低調(40%程度)という事情がある。一方で、日本人は高濃度乳房の割合が高く、マンモの弱点を補う対策は強く求められている。

 ◆発見率は1・5倍

 東北大の大内教授を中心とするチームはそこで、マンモに超音波検査を上乗せすることで、40代の乳がん検診の効果を上げられないか検証する研究を平成19年に開始した。
全国の40代女性約7万3千人をマンモ単独群と、マンモと超音波の併用群に無作為に分けて比較したところ、がん発見率は超音波併用群が1・5倍高く、特に早期がんを見つけられる割合が高かった。一方で「要精密検査」とされ、負担のある追加検査をした人も併用群に多かった。「検査による情報が増えた分、拾い過ぎも起きた」と戸崎さんは解説する。

 検診の有効性は、死亡率が減ったかどうかで判断するため、最終結論を得るには10年以上の追跡が必要だが、研究チームは「両群で進行がんの発症率に差があるかは、あと数年で明らかになるのではないか」とみている。

 福田護・聖マリアンナ医大ブレスト&イメージングセンター院長は「自治体の検診として超音波併用を勧めるのは時期尚早だが、心配な個人が自費で超音波を付け加えるのはよいと思う。ただし、精密検査が増えるといった不利益が上乗せされる可能性も理解してほしい」と話している。


引用元:
40代の乳がんマンモ検診 超音波追加で発見精度向上(産経ニュース)