男性ホルモンであるテストステロンは加齢により徐々に分泌量が減ります。その結果、更年期障害などが引き起こされるとし、補充療法が採られる場合も。この補充療法、実際のところ安全な方法なんでしょうか…?最新の研究結果とともに。

テストステロン(testosterone) −

精巣や卵巣から分泌されるステロイドホルモンのひとつ、アンドロゲン(androgen)に含まれる3種類の物質のひとつで、哺乳類のオスの睾丸で95%、副腎で5%分泌されます。
女性も分泌しますが、男性の1/5〜1/10程度の量ですので、睾丸ホルモン、つまり男性ホルモンに分類されています。

分泌量が減ることの弊害として最も有名なのは、40歳代以降の男女の性ホルモン分泌量の低下が原因となる自律神経失調症に似た症候群である「更年期障害」でしょう。
男性の場合は40歳代後半で症状が現れることが確認されています。
ただ、テストステロンは、30歳を迎える頃から年1-2%の割合で分泌量が減りますが、一般的に個人差が激しいものです。

遺伝子的に分泌量の少ない人もいますし、何らかの化学療法や感染症のせいで分泌量が減る人もいます。

何かと批判の多い、”テストステロン補充療法”に効果が!
米カンザス大学の研究者;Rajat Barute博士らによる最近の研究結果で、注射・経皮パッチ・ゲルなどの方法でテストステロンを通常量まで投与し続ける”テストステロン補充療法(testosterone replecement therapy,TRT)”を受けた高齢男性は、脳卒中、心臓発作、それにあらゆる死因リスクの軽減につながったことがわかりました。

療法を受けても、最後まで通常レベルまで達しなかった人は、達した人と同じ効果は得られませんでした。

博士によりますと、これは人為的に通常レベルまでテストステロンを補充することによる「著しい効果」を証明したという意味では、初の研究結果だそうです。
この研究はテストステロン分泌量が少ない、83,000人以上に及ぶ50歳以上の男性を対象に1999年から2014年にわたって 次のような3グループに分けて実施されました。

テストステロンを通常レベルまで与え、通常レベルに達したら治療をやめるグループ
テストステロンは与えるが、通常レベルには達しないよう調整されたグループ
テストステロンを与えられなかったグループ
結果、1.と3.のグループを比較すると、はっきりとした違いが出ています。
通常レベルまで達した高齢男性の24%で心臓発作の低下、36%で脳卒中の低下、そして56%でその後の長寿が確認されました。

この調査結果は、European Heart Journalのオンライン版で発表されたものですが、テストステロン補充療法はそれが世に出てからずっと、そのリスクと効果について賛否が分かれるテーマでした。
これまで医学界は議論を発展させるに足る証拠を掴んでいませんでしたが、今回の研究で恩恵を受けた被験者の存在が出たので、今後議論が深まることは必至でしょう。

だが、FDAは補充療法を規制している。
実は2015年初めに、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、「テストステロンが加齢以外の明確な症状のない男性にも広く施術されている現状があり、年間20億円以上が医療費として費やされている割に、安全性や恩恵がはっきり定義されていない」として、「テストステロン療法の過剰な施術は逆に脳卒中及び心臓発作のリスクになる」という内容のガイドラインを発表、医薬品メーカーや医師に向け、患者に注意喚起を行うよう指示したのです。

ということは、1年も経たないうちに全く正反対の研究結果が出てしまったことになりますね。

テストステロンによる健康利益、なぜ起こる?
これについては、実はいまだよくわかっていません。

研究者によりますと、次のような理由が指摘されています。
例えば、インスリン感受性。血液の中のブドウ糖と結合するインスリンは、それを細胞に送ることで血糖値を下げますが、人によってインスリンを受容できるかどうかにかかわる「インスリン受容体」の働きは異なり、この働きが生まれつき弱い人はインスリン感受性が低いのですが、テストステロンがインスリン感受性に何らかの影響を与えた可能性があるといいます。

そのほか、体脂肪率、血小板の数、脂質と燃焼率などの指標が指摘されています。

テストステロンの副作用
レノックスヒル病院のガン専門医;デイビッド・サマディ医師によりますと、テストステロンは前立腺ガン治療で投与されることがあるが、投与レベルが高くなりすぎると治癒するどころか悪化させることもあるといいます。このほか、下記の副作用があるといいます。

ニキビなど、脂性肌に伴う肌疾患
脱毛
血栓ができる
睾丸縮小
攻撃性や気分の移り変わりが激しくなる
睡眠時無呼吸症候群
精子の数的減少

毎日の生活で、分泌量を増やそう
サマディ医師によると、テストステロン分泌量は朝9時前後に計測されるべきなのに守られていないことが多いそう。分泌量は400〜600の間が正常で、それ以上だと良くないらしいです。
医師は、何か問題を感じる場合はまず泌尿器科にかかることを勧めています。彼によると、TRTなど受けなくても、テストステロンは

アルコール摂取を控える
ストレスを減らす
亜鉛やビタミンDを摂取する
オリーブオイルやアボカドなどに含まれる植物性油を摂取すること
糖質制限をする
など、ちょっとした日々の努力で分泌量を上げられるそうです。

《参照》

Testosterone therapy may help older men live longer-timesofindia.indiatimes.com
Unpacking the Dangers of Testosterone Replacement Therapy-huffingtonpost.com
FDA Drug Safety Communication: FDA cautions about using testosterone products for low testosterone due to aging; requires labeling change to inform of possible increased risk of heart attack and stroke with use-fda.gov

引用元:
『テストステロン補充療法(TRT)』って効果あるの?(imedi)