3Dプリンターの技術と提携した新薬が今年初めて米国で認可されました。CADソフト提供で有名なオートディスク社が取り組む『FARMA』プロジェクトも、合成生物学で、キッチンにあっても違和感のない機械で簡単に薬を作ることを目指しています。問題はあるのでしょうか。
3Dプリンターの技術との提携も。2025年の自宅には、こんな機械があるかもしれません。
その機械はシリンダーの中で、青緑色に輝く藻を醸造中。
そう、薬を作るために。完成したら、フィルターで分量を測定され、自動的にカプセルに入れられます。あとは飲むだけー
当の機器『FARMA』(下写真)は、今はただのコンセプトに過ぎませんが、起案者であるオートディスク(Autodesk)社のパトリック氏は「生物を発酵させて薬を作るシステムは、とても簡単にできます」と、5~10年以内の製品化を見込んでいます。
デザインは「台所に置いてあっても温かみがあって落ち着くような印象と、その正反対である、冷たく近未来的な感じの中間を目指したもの」。
オートディスクは、工業・建築図面などを作成するCADと呼ばれる ソフトウェア『AutoCad』で世界のシェアNo.1を誇るソフトウェア企業です。
近年大注目の3Dプリンターとの連携により、あらゆるものを瞬時に製作する事業でも注目されています。
3Dプリンター提携の認可薬あります
ちなみに、今年米食品医薬品局(FDA)は、3Dプリンターで製造された薬剤を世界に先駆けて認可しました。
Aprecia Pharmaceuticals社(米・オハイオ州)のてんかん薬「レベチラセタム(商品名Spritam)」がそれです。
「薬」を「形」にする技術は、1980年代にマサチューセッツ工科大学(MIT)が開発した3Dプリント技術「ZipDose」を採用。「少量の液体を加えるだけですぐ薬が生産できる」「個々のユーザーに応じて服用量を簡単にコントロールできる」など、たくさんのメリットがあるそうです。
今後はもっと『自宅で作れる薬』が認可されると思われます
例えば、抗マラリア活性を有する『アーテミシニン(artemisinin)』。
これはヨモギ属の植物である、クソニンジン (Artemisia annua) という、生物由来の成分から作られる薬であり、遺伝子操作された酵母を用いて製造されています。
こんな風に、合成生物学を応用してあらゆる種類の薬が安く、しかも早く生成できる。 ーしかもあなたの家のキッチンで!ー と、考えるのは自然なことです。
パトリック氏の場合は、『スピルリナ(spirulina)』と呼ばれる『藻』の一種で、サプリメントとしても販売されている生物を、試作品に使用することにしました。
「スピルリナ」は、およそ35億年以上も前から、アフリカや中南米の湖にいる生物です。
最近 その栄養価が注目され、製品化への道へ。
アルカリ性なので、ヒトの身体が酸化するのを防いで免疫力をあげたり、食物繊維で快便にしてくれたり、アレルギーを引き起こすヒスタミンを無毒化してくれたり、貧血解消にも良い生物です。
世界中で広く食べられていますが、日本では株式会社DHCなどを始めとする健康食品会社が、この名前でサプリを出しています。パトリック氏は 薬を生成できるように、このスピルリナの細胞に修正を加えました。
今後の技術的な『課題』
今後 改良がなされるべきことは、生物が薬品として有効な分量の薬を作れるようになることと、生物と薬を分離するプロセスを追求することで、それは遺伝子工学と生化学の課題です。
しかしパトリック氏は、「必要経費」や、「生物の遺伝子操作に必要な知識」へのアクセスは今、かなり充実してきているといいます。
それに反して、実際に薬品を製造するためのハード面は、やや初歩的な段階にあるそうです。
上で触れたようなFDAによる認可などの政策面や、製薬会社のビジネス展開には、巨大な変化が起きつつありますが、ホームメイドの薬が製薬会社の大規模工場で製造されたものと同じ品質基準を満たせるのかは、現段階でまったく保証できません。
また、製薬会社側としては、「薬のDNA合成過程」などの知的財産を失うことを懸念しています。
技術の発展は、「ユーザーの倫理観」に委ねられている
「最初のうちは、非合法な薬ができる可能性があります。薬を作れる生物の遺伝子情報を取得する必要がありますのでね。現時点では誰もそんなことを教えてはくれないでしょう」と氏。
でも、”Dakodeのような存在が、生物学のフィールドにもあると想像してみてください”
※ Dakode…窃取した情報や不正なツールの売買を行っていた、かつて存在したアンダーグラウンドなフォーラム。しかし今年7月に、米FBIと司法省が主導して進めてきたサイバー犯罪撲滅作戦”Shrouded Horizon”により一網打尽にされた
パトリック氏自身の現時点での感想は「個人が自由に薬を作れるという利便性と、薬物中毒を生み出しかねない危険性に、引き裂かれている感じ」だとのことです。
『FARMAプロジェクト』の目的は、何か?
それは、合成生物学が、私たちの生活にどのようにして溶け込めるのか?その方法について、やや挑発的な形で消費者に想像を促すことだそうです。
この新技術がどう使われるべきかは、消費者が決めるんです。私は、消費者に、将来的に何が可能なのか、どんなことが可能なのか、それが実現した社会を想像するお手伝いをしたいだけです
パトリック氏
【参照】
This Gadget Lets You Brew Your Own Drugs In Your Kitchen-fastcoexist.com
「3Dプリンターで製造する薬剤」、世界で初めて認可される:米FDA-wired.jp
アーテミシニン系薬剤によるマラリア治療の位置づけ-国立感染症研究所
DHCのスピルリナ製品-folsomsymphony.org
引用元:
悪用しないで!10年以内にお薬は家で作れるようになるかも。(imedi)