日本では実に6組に1組のカップルが悩み、推定50万人が治療を受けていると言われる「不妊症」。子どもを望むカップルにとって、不妊による心身のストレスは計りしれないが、そんな方に朗報だ。ボリビアの先住民族の女性986人を対象にした研究によると、回虫による感染が妊娠につながったという。なんでも、感染により「免疫系」が変化し、妊娠しやすくなったということだ。

■ボリビアの女性986人を対象に9年間調査


 カリフォルニア州、サンタバーバラにあるカリフォルニア大学教授アーロン・ブラックウェル氏主導の研究チームは、受胎能力(1人目を妊娠したときの年齢と妊娠していないときの期間の変化)と腸管に寄生する蠕虫(ぜんちゅう)の関係を調査した。蠕虫とは多細胞性の虫のことで鉤虫(こうちゅう)や回虫(かいちゅう)などの寄生虫も含まれる。

南米ボリビアのアマゾン低地に住むチマネ族は、人口のおよそ70%が寄生虫に感染しているという。また、チマネ族の女性は1人につき平均9人出産し、女性の56%が鉤虫に、15〜20%が回虫に感染している(※1)。

こうした背景から研究チームは、チマネ族の女性986人の協力を得て、寄生虫感染と妊娠との関係を9年間にわたり調べ上げた。

■回虫の寄生で早期の妊娠や子どもの増加


 調査の結果、蠕虫に感染しなかった女性と比べ、回虫に感染した女性はより早い年で1人目を妊娠し、32歳以下の妊娠がより多く見られた。年齢が上がるにつれてこの傾向は減少したが、早い時期からより多く妊娠したため、平均で2人多く出産していた。

 一方、鉤虫に感染した女性は、蠕虫に感染しなかった女性と比べて1人目の妊娠が遅く、全年齢において2人目からの妊娠率が少なかった。特に、慢性的に鉤虫に感染している女性は、蠕虫と無縁の女性よりも出産した子どもが3人少なかった(※1)。

■なぜ鉤虫は妊娠率を下げ、回虫は妊娠率を上げるのか


 これらの研究結果からは、回虫に感染した女性たちは妊娠しやすい体質になっていたことが考えられる。寄生虫による感染は一般的に生殖能力を下げるにもかかわらず、回虫に感染した女性の妊娠率が高かったのはなぜだろうか?

 そもそも、妊娠するということは、女性の免疫系が体内から胎児を排除しないように変わることだという(※1)。

 これの反対、すなわち、正常に変化しなかった免疫系が胎児を受け入れない状態が「不妊」なのである。今回の結果は、おそらく、回虫が体内の免疫システムを変化させ、妊娠しやすい(胎児という一種の異物を受け入れやすい)体作りに貢献したことによるものだとブラックウェル氏は言う。

 今後は、回虫を利用した新たな不妊治療も可能性として視野に入れられているそうだ。研究が進み、不妊治療がさらに発展することをぜひとも期待したい。



引用元:
寄生虫が妊娠率を高める!? 不妊治療のさらなる発展に期待(日刊アメーバニュース‎)