常に元気なイメージのタレント、北斗晶さん(48)の乳がん公表は、同世代の女性たちにショックを与えた。しかし実は、乳がんになる人は増えている。国立がん研究センターの推計では、2015年に乳がんと診断された人は約9万人。10年前の05年には約4万8000人だったので、ほぼ倍増していることになる。乳がんが増えたワケと予防法について、がん研有明病院乳腺センター長の大野真司さんに聞いた。
乳がん「10のリスク」
「乳がんが増えているのは、日本人女性の平均身長が伸び体格がよくなったことやライフスタイルが変化した影響が大きい」。大野さんはそう話す。
乳がんは誰でもなる恐れのある病気だが、かかるリスクが高いのは、(1)から(10)の中で当てはまる項目が多い人だ。(1)初潮が早い=11歳以下(2)閉経が遅い=54歳以上(3)初産年齢が高い=30歳以上(4)妊娠・出産歴がない(5)授乳歴がない(6)祖母、親、子、姉妹に乳がんの人がいる(7)肥満度が高い(閉経後)(8)喫煙している(9)大量に飲酒する習慣がある(10)運動不足−−。あなたや家族には、当てはまる項目がいくつあるだろうか。
(1)から(5)はすべて月経に関わる項目だ。なぜ、初潮年齢や出産・授乳の有無と乳がんが関係するのか、大野さんはこう説明する。「女性ホルモンにさらされる期間が長いと乳がんにかかるリスクが上がります。妊娠中や授乳中は月経がなくなりますから、5〜6人子供を産むのが普通だった時代の女性は、妊娠・授乳中も合わせると10年以上月経のない期間があったと考えられます。初潮が早く、子供を産まず、閉経が遅ければ、それだけ女性ホルモンにさらされる期間は長いわけです」
閉経後の肥満は大敵
一方、国立がん研究センターの「多目的コホート研究」によると、閉経後でBMI25〜29.9の女性は、19未満の人に比べて1.5〜1.6倍、30以上だと同2.3倍乳がんになりやすい。「肥満度が高いと乳がんになりやすいのは、閉経後は、それまで卵巣で作られていた女性ホルモンが脂肪組織や副腎で作られるようになるからです。肥満度が高い人ほど女性ホルモンの分泌量も多くなります。独身の人に妊娠・出産を勧めたりするなど個人のライフスタイルに関わることを変えるのは現実的ではありませんが、閉経後の肥満は予防ができます。閉経後は基礎代謝が落ち、太りやすくなるので必要以上に食べすぎないようにしましょう」と大野さん。特に日本では、閉経後の乳がんが急増しているので要注意だ。
女性ホルモンは、血管や骨を守り肌に潤いを保つ働きをしている。40〜50代の女性が男性より心筋梗塞(こうそく)を発症しにくいのは女性ホルモンに守られているからだ。だが、乳がんに限ってみると、女性ホルモンにさらされる期間が長いのはメリットばかりではないことが分かる。なお、胸の大きいグラマーな人のほうが女性ホルモンは多く乳がんになりやすいかというと、そういった研究報告も事実もないそうだ。
「喫煙習慣、お酒の飲み過ぎも乳がんのリスクを上げます。逆に、定期的な運動をする人は、ほとんど運動をせず座っている時間が長い人に比べて乳がんの発症率が約3分の2低いことも分かっています。乳がんを予防するには、たばこを吸っている人が禁煙するのはもちろん、お酒は1日1合(ビール大瓶1本、ワイン200ml)未満にし、定期的に運動することが重要です」。そう大野さんは強調する。残念ながら、乳がんを確実に予防する食品は分かっていない。
乳がんは治りやすい
日本乳癌学会「全国乳がん患者調査報告」(2011年次症例)より
日本乳癌学会「全国乳がん患者調査報告」(2011年次症例)より
ただ、(1)〜(10)に当てはまっても必ず乳がんになるわけではなく、一つも当てはまらなくても乳がんになるリスクはゼロではない。乳がんになっても努力が足りなかったからではないので、そこは誤解しないでいただきたい。「乳がんは比較的治りやすいがんで、1cm以下で見つかれば9割以上の人は治ります。また、進行した段階で診断されても治癒率は高く、がんと共存しながら仕事や育児を続けている方は大勢います。(1)〜(10)に該当するかに関係なく、乳房やわきの下にしこり、ひきつれやへこみを見つけたり、乳頭や乳輪部分に湿疹や分泌物があったりしたら、怖がらずに、乳腺専門外来のある医療機関を受診してみてください」と大野さん。日本乳がん学会の調査によると、病気を見つけたきっかけで最も多いのは検診ではなく、自己発見によるものだ(グラフ)。
乳がんはいまや女性に最も身近ながん。国立がん研究センターの統計では、日本人の乳がんは40歳を超えると増え始め、特に45〜49歳、55〜59歳、60〜64歳に多い。人ごとで済ませないようにしたい。
引用元:
なぜ、乳がんは増えているの? 予防はできる?(毎日新聞)