性暴力を受けた人が将来被害を届け出る場合に備え、加害者の体液などの証拠を民間団体に保管するためのマニュアルを大阪府が全国で初めて作成した。被害を受けた直後は訴えをためらう人が多い実態を踏まえたもので、既に複数の病院が協力して保管の取り組みが始まっている。


 内閣府が2012年にまとめた調査では、異性から性暴力を受けた人のうち、「警察に連絡・相談した」と答えたのは3・7%だった。証拠を早く採取しなければ被害者が後に声を上げても立証が困難になるケースがあり、課題となっていた。

 府は被害者が告訴を望んだ際に提出できるよう、証拠を保管できる仕組みを検討するため、警察や検察、法医学者らとワーキングチームを設置。昨年2月、被害者の心情に配慮した証拠の採取や記録方法などを定めたマニュアルをまとめ、15年度から運用を始めた。

 証拠は産婦人科のある府内の「協力医療機関」(現在8カ所)から阪南中央病院(同府松原市)にあるNPO法人「性暴力救援センター・大阪」(通称SACHICO)に集めて保管する。被害者に費用負担は求めない。SACHICOは10年から支援に取り組んでおり、被害者が警察への届け出をためらった場合でも、同意を得た上で証拠を採取、保管。警察に証拠を提出し、加害者の特定につながったケースもある。

 被害者と接する医師や看護師にはSACHICOが研修を実施。個別ケースごとに医療機関と会合を開き、きめ細かな支援につなげる。府は研修費などで15年度に約300万円を計上、国のモデル事業として約750万円の委託費を受けた。既に複数の医療機関で被害者が受診し、証拠を保管しているという。

 事業を検証した内閣府の報告書では、有識者が「マニュアルの作成は先進的で有用」と評価。府には導入を検討する複数の自治体から問い合わせが寄せられており、府治安対策課は「性暴力の被害者救済は全国的な課題。モデルケースとして広がれば」としている。【


引用元:
証拠保管のマニュアル 大阪府が全国初(毎日新聞)