ママ目線で育児支援
左腕で赤ちゃんを抱いた母親が、絵本を借りようと10冊ほどカウンターに置いた。蒲郡市立図書館1階の児童室。職員が貸し出し手続きを終えると、育児ボランティアの天野富士子さん(67)がそっと近づき、母親のバッグに本を入れた。「抱っこしながら、本を出し入れするの大変でしょう。だからお手伝いをしているんです」とほほ笑んだ。
毎週金曜日の午前10時半〜正午は、同図書館の「あかちゃんタイム」。赤ちゃん連れの利用者を手助けする育児ボランティアが常駐し、絵本の「おはなし会」や、若い母親向けに選んだ書籍やCD・DVDをカートで運ぶ「ママ文庫」を設けるなど、徹底した「ママ目線」が特徴だ。
きっかけは約5年前、当時一般書の司書だった児童サービス主任、三浦佳穂さん(36)の出産、育児体験にさかのぼる。図書館は静かに利用するものと決まっているが、赤ちゃんは静かにしてくれない。読みたい育児書などは一般向けの書架にあり「赤ちゃんを連れていったら、他の利用者に迷惑をかけてしまう」と引け目を感じた。また一般向けの書架と児童書コーナーは2階と1階に分かれ、本を探して回った後は疲労感が残るなど、使いづらさに気がついた。
職場に復帰した三浦さんは、児童書の担当を志願。昨年1月、ママたちが赤ちゃんを連れて来館しても安心して本を選べるよう「あかちゃんコーナー」を開設した。乳幼児を解放できるカーペット敷き約10畳の朗読スペースに、赤ちゃん向けの絵本や育児書、雑誌など約700冊を常備する。あかちゃんタイムは昨年4月にスタート。同コーナーで絵本を読み聞かせしたり、手遊びしたりするおはなし会は、毎回会場がいっぱいになるほど親子連れが詰めかける。
「雪がふわっ、ふわっ、ふわっ。降って積もって、まっ白」−−。昨年12月のおはなし会。朗読ボランティアの瀬川かよさん(77)が、絵本を参加者に向け広げて読んだ。赤ちゃんたちはお母さんの膝の上で静かに座っていたり、ハイハイしたり、よちよち歩きをしたりと、思い思いの方法で聞いていた。
長男の匠隼(たくと)ちゃん(1)を連れて参加した小出香緒里さん(41)は「家だと落ち着いて絵本を読んであげられないし、絵本の読み方も教えてもらえる」と、生後3〜4カ月の時から、ほぼ毎週参加している。「子どもが同い年のお母さんとお友達になれた」と、朗読後も子育てなどの情報交換をし、母親同士の交流を楽しむ。
荒木アレシャンドレさん(29)は妻の久依さん(29)、生後8カ月の長男、頼佳(らいか)ちゃんと参加した。パパは1人だけの“白一点”。妻から「読み聞かせも、何でも手伝ってくれる」と評価されるイクメンだ。「絵本の言葉や情報が耳に入って、身についてくれれば」と子どもの成長を気遣う。
これまで図書館の利用者として認識されていなかった赤ちゃんたちに、ママ・パパの育児支援を通じて、光が当たり始めている。【吉富裕倫】=つづく
メモ
ブックスタートは、0歳児健診などの機会に絵本をプレゼントする英国起源の活動。日本では2001年以降に広がり、4カ月児健診で絵本を2冊贈る蒲郡市を含め、全国942市区町村が実施している(NPOブックスタート調べ)。親が愛情に満ちた言葉を語りかけて赤ちゃんとふれあい、お互いに幸せを感じるきっかけを作る狙いがある。
引用元:
学ぶ・楽しむ・集まる/3 あかちゃんタイム 蒲郡 /愛知(毎日新聞)