□総合診療科科長・古野憲司医師

 冬は子供にとって、とても危険な季節です。感染症をはじめ、誤飲による窒息、やけどなどが格段に増えます。まず、冬は怖い季節だということを、多くの人に知っていただきたいのです。

 いま、「RSウイルス」の患者が過去最悪のペースで増え続けています。風邪などの感染症を引き起こす、ありふれたウイルスの一種ですが、油断大敵なのです。

 最初はくしゃみや鼻水といった症状が出ます。「風邪かな」と軽く考えているうちに、日に日に悪化し、ぜえぜえという苦しい呼吸や、「ケンケン」という犬がほえるような変なせきが出るようになります。

 ひどくなると、呼吸をしていない、意識がおかしいといって救急車で運ばれる子供もいます。先日、病院にきたお母さんも「上の子が風邪だったので同じと思っていたら、顔が真っ白になり意識がおかしくなった」と話していました。
身近に存在するウイルスなので、誰もが普通に感染しています。特にこの時期は、鼻水が出るな、調子が悪いなと感じたら、RSウイスルによるものが多く含まれます。

 体力のある大人はすぐに治るのですが、低年齢の子供、特に1カ月未満の乳児が危険です。

 かかった人の3%が、入院が必要なほど症状が悪化するというデータがあり、最悪、亡くなることもあります。乳幼児突然死症候群で死亡した子供を調べると、RSウイルスが検出されたケースもあります。

 特に心臓病や免疫不全があったり、未熟児で生まれた子供は重症化しやすい傾向があるようです。

 単なる風邪か、重症化する可能性があるのか−。保護者にとって見極めが非常に難しい病気です。乳児で気を付けたいのは、母乳の飲みが減ったときや、機嫌の悪い状態が続くときです。

 赤ちゃんの「飲み方」は体の状態をみる上で大きな目安になります。一見問題がないようにみえる場合も、こうした保護者の感覚は非常に重要です。熱がないのにいつもと様子が異なるときは、かかりつけ医に相談してください。

 患者は10年前に比べ、4倍近くに増えています。各病院で検査ができるようになったこともありますが、実感として年々増えている状況です。大人が感染に気付かず、乳幼児にうつしてしまうこともありますから、風邪かと思ったときはマスクや手洗いをしっかりすることが大切です。
それから、12月に入り、のどに異物を詰まらせる子供が急激に増えました。おもちゃの破片や硬貨、小さな鍵…。例年この時期に多く発生します。

 なぜ冬に増えるのかは分かりません。考えられるのは、旅先や帰省先など普段と違った環境では、いつも子供の手に届かない場所に置いているものが、目の前にあったりするからでしょうか。

 この時期、間違えて灯油を飲む子もいます。はかせようとして気管に入ると、障害を起こす場合があります。そのほかにも、洗剤や鋭利なものなど、はかせてはいけないものがあります。とても覚えきれないでしょうから、ケースに応じた対処法を、冷蔵庫にはるなど確認できるようにしておくとよいでしょう。水や牛乳を飲ませる人もいますが、吸収を速める場合がありますから、専門家の指示を受けるまでは基本的に飲ませないでください。

 冬の急患センターは、患者が多いことに加え、重症者もいるので緊張感が非常に高まります。最も注意すべき季節といえます。

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【プロフィル】古野憲司

 九州医療センター、九州大学病院、九州大生体防御医学研究所、福岡東医療センターなどを経て、平成24年に福岡市立こども病院・感染症センター(小児感染症科)着任、今年5月から同病院総合診療科科長。救急部門を中心に、小児時期に発症する疾患や病状に幅広く対応している。


引用元:
冬に潜む重大な危険 (産経新聞)