「オギャー」と生まれてから、しばらくすると食物アレルギーが始まり、アトピー性皮膚炎、ぜんそく、花粉症へ…と、年齢が上がるにつれて聞こえてくる困った“行進曲”がある。「アレルギーマーチ」と呼ばれる。
アレルギーは遺伝、などと諦めてはいないだろうか。症状が出るのを待っている手はない。赤ちゃんの時から保湿剤を全身に塗ることでアトピー性皮膚炎の発症リスクを3割以上抑えられる、という研究成果が発表された。
アレルギーへの先制パンチといえそうなこの研究成果、時には命に関わることもある危険な“アレルギーマーチ”を止めることができるだろうか。
次々に起こるアレルギー「アレルギーマーチ」って、何?
アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)は年齢とともに変化する。
例えば、赤ちゃんの時に食物アレルギーが出て、それが原因でアトピー性皮膚炎になり、幼児期には風邪の後にゼエゼエするようになって小児ぜんそくを起こし、小学校に入るころにはスギ花粉症、思春期には気管支ぜんそくへ…。こんな具合にアレルギーの中心症状が連鎖して起き、症状が消えたりしながら年齢とともに変わっていく様子を行進になぞらえて、アレルギーマーチと呼ぶ(※1)。
生後間もないうちにアレルギーを予防! 赤ちゃん118人が参加
小さな子に症状が出始めると、ハウスダストやダニなどの対策をしたり対症療法に追われたりする家庭がほとんどだろう。そのアレルギーを、症状が出ていない赤ちゃんのうちに予防できる可能性があるというのが、これから紹介する研究成果だ。
国立成育医療研究センターの大矢幸弘・生体防御系内科部アレルギー科医長らの研究で、論文は米国のアレルギー学会誌に掲載された。研究概要は次の通りだ(※2)。
・アトピー性皮膚炎の疾患歴がある家族がいる、生後1週間以内の赤ちゃん118人を、2つのグループに分ける
・1つのグループには市販の保湿剤を毎日全身に塗る
・もう1つのグループには乾燥している部分にだけワセリンを塗る
・それを32週間続け、観察する
その結果、分かったのは、
・保湿剤を毎日塗ったグループでは19人がアトピー性皮膚炎になった
・乾燥している部分にだけワセリンを塗ったグループでは28人がアトピー性皮膚炎になった
・全身に塗ったグループはアトピー性皮膚炎の発症リスクが3 割以上低下した
・アトピー性皮膚炎の発症が、卵アレルギーの発症と関連することが確認された
アレルギーマーチの「初めの一歩」、止められる?
生後間もない時期から保湿剤を全身に毎日塗ると、アトピー性皮膚炎の発症リスクが低下し、その発症を抑えると食物アレルギーも発症させずに済む可能性がある、ということになる。
成育医療研究センターの大矢医長は「アトピー性皮膚炎の発症を防ぐため、1日1回以上、皮膚が乾燥したと感じる前に保湿剤を塗布する習慣をつけることが大切だ」とした(※2)。
アトピー性皮膚炎は、食物アレルギーやぜんそくなど他のアレルギーにつながるアレルギーマーチの「初めの一歩」とされる。それをストップさせる可能性があるとして、医療関係者が寄せる期待は大きいようだ。
「保湿剤で新たなアレルギーの心配は?」の懸念も
その一方で、「保湿剤だけで皮膚のバリア機能を完璧に保つことはできず、完全に予防できるわけはない」という冷めた見方も。
さらに、生後間もないころから保湿剤を塗ることで、保湿剤が体内で悪い反応を起こすのではないか?新たなアレルギーを発生させるのではないか?といった声も聞かれる(※3)。かゆくて泣き叫ぶ幼児や、力の加減を知らない赤ちゃんが、血が出るほどかきむしる姿を見るにつけ、研究のさらなる進展が待たれる。
引用元:
止められるか?アレルギーマーチ 赤ちゃんのうちの全身保湿が重要(CIRCL)