乳がんの体験者と非体験者が垣根なく集う異色のセミナーが毎月、東京・銀座で開かれている。

 働き盛りに多い「乳がん」を主要テーマに、女性の健康に関する幅広いテーマを取り上げ語り合う。「マンマチアー」と名付けられた活動に込められた思いとは。

 11月18日の夕刻。東京・銀座のクリニックに仕事帰りの女性たちが集まってきた。カップルで参加する人たちもいる。「来てくれてありがとう」「楽しんでいってね」。主宰者の増田美加さん(53)と山崎多賀子さん(55)が出迎える。50席はすぐに埋まった。

 この日のテーマは「乳がん検診」。40歳以上の女性が定期的に受けるよう国が推奨するマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)について専門医が解説した。「マンモグラフィーだけではがんを見つけにくい乳房を持つ人がいる。乳がん検診も万能ではないと知ってほしい」と呼びかけた。

 参加者は、体験者のほか、検診に関心のある人、患者のパートナーなど。「ここで聞いた話を周りの人に伝えてくれたら、検診の啓発にもつながる」。増田さんは強調する。

 セミナーを企画する2人は約10年前、乳がんを告知され、治療を受けてきた。ともにジャーナリストで、増田さんは女性医療、山崎さんは美容をテーマに執筆している。病気を公表して活動する中で出会い、意気投合した。

 「最良の医療を受けたい」「抗がん剤の副作用は」「全摘したらどうなるの?」――。患者の切実な思いを知る2人は5年前、「体験が役に立つなら」とマンマチアーを始めた。名称に込めたのは「乳房の健康を応援したい」との思い。乳がん患者への支援と、乳がんに関する情報発信が活動の2本柱だ。

 毎月第3水曜日に開催。「毎月、ここに私たちがいることに意味がある」と山崎さん。治療をしながら仕事を続け、体験を糧に活動する2人。病気とどう向きあうのか。そのすべを知りたくて参加する人も多い。

 「正しい医療情報を伝えたり、仲間を求める患者同士をつないだり。必要とするものに最短で行き着けるようサポートするのも役目」と増田さんは言う。

 2人に背中を押され、一歩を踏み出す人もいる。

 2年前に乳がんを告知された都内の会社員、田中愛子さん(35)は、「2人を見て、治療が終われば仕事に戻れると分かり、前向きになれた」という。今年2月、医療従事者らと江戸川区に「がんカフェ」を設立、患者を支える側に回る。

 乳がんは12人に1人がなる、女性に身近な病気だ。国民の2人に1人ががんになる現代では、患者とそうでない人は延長線上にいるともいえる。その視点から、あえて患者会の形を取らず、病気の経験者とそうでない人、性別や年齢など立場を超えて、ともに考え、語り合う場にした。

 65回を重ねてきたマンマチアー活動。「乳がんで苦しむ女性を一人でも減らし、女性たちを元気にしたい」。その願いのもと、参加者にバトンを受け渡していく。

 メモ 次回は16日午後6時半、中央区銀座の「対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座」で。「いつも、希望を持って生きる―緩和ケアができること」をテーマに、緩和ケアの専門医が講演する。無料。申し込み不要。詳細はホームページ(http://www.cnet.gr.jp/mamma/)。(佐々木栄)

 (2015年12月10日 読売新聞夕刊掲載)



引用元:
乳がん知ろう応援セミナー…体験者と垣根なく語り合う(ヨミドクター)