がんの治療に免疫の働きを利用した「抗PD-1抗体」という薬が最近注目されています。ほかの抗がん剤(プラチナ製剤)が効きにくい20人の卵巣がん患者への抗PD-1抗体の有効性と安全性が評価されました。


◆抗PD-1抗体とは?

免疫細胞はがん細胞を攻撃する働きがありますが、がん細胞はこの免疫細胞から自分を守ろうと抵抗します。これは「がん免疫逃避機構」と言われています。

「がん免疫逃避機構」の1つであるPD-1/PD-L1経路を遮断するのが抗PD-1抗体のニボルマブです。この薬は皮膚がんの一部に対して日本でも承認されているほか、肺がんの一部、卵巣がんに対する新しい治療戦略としても期待されています。



◆プラチナ製剤抵抗性卵巣がん患者20人を対象に検証

20人のプラチナ製剤抵抗性卵巣がん患者が、2週毎にニボルマブ静脈点滴で1mg/kgか3mg/kg(それぞれ10例ずつ)による治療を受けました。20人のニボルマブ治療患者は研究の最終日2014年12月7日時点でまでの経過を調査されました。



◆卵巣がん患者に新しい治療戦略

治療の結果、20人中2人で腫瘍が完全に見つからなくなり、副作用の可能性がある重い作用が2人に顕れました。詳しくは次の通りです。

グレード3-4の治療関連有害作用の発現は20人中8例(40%)であった。2人に重篤な有害作用が顕れた。反応の評価が可能であった20人の患者において、最良総合効果 は15%で、恒久的な完全寛解に達した2例(3mg/kg群)を含んでいた。研究終了時点での無増悪生存中央値は3.5ヶ月(95%信頼区間,1.7〜3.9ヶ月)で、全生存中央値は20.0ヶ月(95%信頼区間,7.0ヶ月〜)であった。



今回の研究は卵巣がんに対してニボルマブの安全性と有効性を示した世界で初めての報告です。

もし今後検証が進み通常の治療として使えるようになれば、今までの治療法があまり効かなかった卵巣がん患者の中には、この薬に希望が持てる人もいるのではないでしょうか。


◆参照文献


Safety and Antitumor Activity of Anti-PD-1 Antibody, Nivolumab, in Patients With Platinum-Resistant Ovarian Cancer.

J Clin Oncol. 2015 Dec 1

[PMID: 26351349 ]


引用元:
日本人で卵巣がんへの免疫を有効にする、ニボルマブの安全性と有効性(MEDLEY)