葉酸は、ホウレン草など緑黄色野菜に多く含まれるビタミンの一つ。
不足すると、胎児の脳や背中の神経の病気を招く恐れがあり、動脈硬化や生活習慣病にも関連することがわかってきた。今年9月、産婦人科医や脳神経外科医らの有志が、パンや麺類などの加工食品に、葉酸を添加することを求める要望書を、各食品団体に提出した。日常の食生活で葉酸の摂取を増やすのが狙いだ。
東海地方の女性(41)は、背中の神経が体外に露出する二分脊椎という病気を持つ。生まれてすぐ手術を受けたが、足にまひが残り、歩くには、つえや足の装具が必要だ。
大人になって、患者団体を通じ、病気と葉酸の関係を知った。
海外の大規模調査で、妊娠を希望する女性が、妊娠前から葉酸をサプリメントで摂取すると、子どもが二分脊椎など脳や背中の神経の病気になるリスクを大きく減らせることがわかった。厚生労働省は2000年、都道府県などに、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までに、食事に加え、サプリメントで葉酸を1日400マイクロ・グラム(1マイクロは100万分の1)摂取することを推奨する通知を出した。
食材に含まれる葉酸に比べ、加工食品やサプリメントに添加される葉酸は体内で約1・7倍利用されやすい。要望書をまとめた熱田リハビリテーション病院副院長の近藤厚生さんは「食事だけで、胎児の病気の予防に有効な葉酸を摂取するのは難しい」と説明する。
画像の拡大 冒頭の女性は、妊娠を望み始めた35歳から、葉酸のサプリメントを飲み、今春、元気な長女を出産した。「多くの女性は何も知らないまま妊娠する。意識せずに葉酸を摂取できる対策が必要」と話す。
現在、84か国が1種類以上の穀類へ葉酸の添加を行い、二分脊椎などの葉酸不足が原因となる胎児の病気が減っているという。一方、国内では、厚労省の通達以降も、二分脊椎の子どもは減らず、年間500〜600人が生まれている。
大人でも、葉酸が不足すると、血液中のホモシステインというアミノ酸が増えて、動脈硬化を招き、脳卒中や心臓病、認知症になりやすくなる。
米疾病対策センターの研究者らは、1998年に穀類への添加対策を始めた米国、カナダと、対策のない英国で、脳卒中の死亡率の変化を比較。添加が死亡率減少に効果があったと結論付けた。
女子栄養大副学長の香川靖雄さんは「葉酸の添加は、妊娠を考える女性だけでなく、すべての国民の健康に役立つ」と強調する。
地域ぐるみの取り組み
画像の拡大 埼玉県坂戸市は2006年度から、地元の女子栄養大と協力して、地域ぐるみで葉酸摂取に取り組む。
国が定めた成人の葉酸の推奨量は1日240マイクロ・グラムだが、400マイクロ・グラムを目標に掲げる。高齢者は消化吸収能力が落ちる上、日本人の約15%は葉酸を体内に取り込みにくい体質を持っているためだ。
管理栄養士らが、講座を開いたり=写真=、個別指導を行ったりして、葉酸の重要性を説明する。希望者には、血液中の葉酸の量や体質を調べる検査を行い、取り込みにくい体質なら、より意識して葉酸を摂取するよう促す。
市内の約40店舗も協力。葉酸を添加したパンや卵を販売したり、葉酸を豊富に摂取できる献立を提供したりしている。
胎児と葉酸に関するチラシも作成して、婚姻届の窓口に置くほか、市内の高校で生徒に配っている。
事業の担当者は、「葉酸をキーワードに市民の健康意識が高まっている」と話している。
(医療部 中島久美子)
引用元:
葉酸摂取で胎児の病気予防…脳卒中や心臓病にも効果 ( 読売新聞)