今回はそろそろ冬の寒さ対策を、と思われている読者のために、役立つお話をしたいと思います。

 先日、北海道の釧路町村会のお招きで、インターバル速歩の普及活動に行ってきました。実技指導の日は幸い積雪もなく、日差しもまずまずだったのですが、さすが北海道。オホーツク海から吹き寄せる風が強く、本場の冬の到来に思わず体が縮こまりました。それでも、集まっていただいた約80人の方々は、元気いっぱいにインターバル速歩を30分ほど体験し、温まった体に、地元産の搾りたてのおいしい牛乳を振る舞われて、和気あいあいの雰囲気の中、イベントは大いに盛り上がりました。この「運動+牛乳」、以前お話しした暑さ対策に効果があるだけでなく、寒さ対策にも効果があるのです。

寒さに対する体の調節反応

 元々ヒトの寒さに対する反応は、暑さに対するほど優れてはいません。どうも、ヒトは暑さに適応できるように進化してきたようです。それが証拠に、他の動物と違って体が毛で覆われていないでしょう。それでも、周りをみてみると、寒がりの人とそうでない人がいます。このことから、寒さに対する体の調節反応が確かに存在すること、そしてそれには個人差があることがわかります。この調節反応とは何でしょうか。そして個人差はなぜ生じるのでしょうか。

 まず、「寒い」と感じるのは皮膚です。寒いと感じたら、ほとんどの人は暖かいところに逃げ込むか、あるいは暖かい衣服で体を覆うでしょう。しかし、寒さに対する体の調節反応を確かめるために、試しに薄着のままでもう少し我慢してみましょう。すると皮膚の血管が収縮して、肌の色が白くなります。これは皮膚表面の温度を下げて、体熱の放散を抑え、体温の低下を防ごうとする調節反応です。さらに我慢していると「震え」が起こってきます。「震え」は筋肉のリズミカルな収縮です。はじめは口の周囲の筋肉で起こり、歯がガチガチ音を立てます。それが徐々に全身に拡大して、最後には四肢に及びます。「震え」によって消費されるエネルギーのすべては熱になります。生じる熱量は、筋肉量が多いほど大きくなり、最大3kcal/分。体重70kgの人で、熱の放散がなければ、1分間に体温を0.05℃、1時間で3℃上昇させる量です。

寒さ対策は運動に勝るものなし

 でも、もしあなたがこのような状況に陥ったら、ガタガタ震えながら不愉快な思いでじっと我慢するより、思い切ってインターバル速歩のようなややきつい運動をして、体を温めようとしますよね。それは正解です。

 運動して筋肉が収縮すると、代謝が進んで熱が生み出され、体温は上昇します。そして「震え」は徐々に抑えられ、いずれ止まります。さらに、インターバル速歩のような「ややきつい」と感じる運動をした後の1〜2時間は、高体温が維持されます。これは、運動中に消費した筋肉内のエネルギー源(ブドウ糖)を回復し、また若干ですが損傷した筋線維を修復することによって、代謝が進むからです。その際、糖質、乳たんぱく質を多く含む牛乳をコップ1杯分飲んだら、この反応がさらに進みます。そして筋肉量も増加することが分かっています(図)。寒さ対策に運動に勝るものはないのです。




寒がりな人とそうでない人の違い

 では、同じ寒さにさらされても、寒いと感じる人とそうでない人では何が違うのでしょうか。その一つは筋肉量の違いです。筋肉は収縮していない安静時も、細胞内でエネルギーを絶えず消費しています。すなわち、筋肉は必要な時にいつでも動けるように「アイドリング(ウオーミングアップ)状態」にあるといえます。筋肉量が多いと、この安静時の代謝量(基礎代謝量)が大きくなるので、体が温まりやすく寒さに強い体になります。加えて、前述したように筋肉量が増えると、「震え」で発生する熱量も増えます。さらに、その筋肉を使って運動をすれば、その強度と継続時間に応じて、多くの熱が生み出されます。

 一方、寒さに慣れた人は慣れていない人に比べて、寒さにさらされてもなかなか「震え」が起こらないようになります。これは、寒さにさらされると交感神経の活動が活発になって脂肪が燃え、熱が生み出されるメカニズムが、寒さに幾度となくさらされるうちに発達するためです。これを、「非震え熱産生」といいます。このように、寒さに強い体になるには、(1)全身の筋肉量を増加させて基礎代謝量を上昇させること、(2)「非震え熱産生量」を増加させることが有効であるといえます。

寒さに強い体を作って免疫を高めよう

 体温が上昇すると免疫が活性化し、風邪を引きにくくなることが知られています。例えば、風邪を引くと発熱しますが、それを無理に解熱剤で低下させると、風邪の症状を悪化させるので、医師はむやみに体温を低下させる治療は行いません。その理由は、体温の上昇は体内に侵入したウイルス、バクテリアの増殖を抑制させると考えられているからです。

 さあ、寒い季節になりますが、「寒い、寒い」と暖かい部屋の中で縮こまっていないで、思い切って外でインターバル速歩をしましょう。


引用元:
寒さに強い人と弱い人の違いとは(毎日新聞)