【紋別】紋別市内の20代の妊婦が紋別地区消防組合消防署の救急車内で男児を出産した。遠軽厚生病院に、まだ産婦人科常勤医がいた今年4月24日の出来事だった。隊員3人の適切な処置もあって、母子はその後、健康に過ごしているという。同病院が分娩(ぶんべん)を取りやめた10月以降、こうしたケースは起きていないが、搬送先が遠距離になっていることから「今後も起こり得る」(同消防署)と、気を引き締めている。
男児を取り上げたのは大森政谷さん(39)、大原徳公(やすゆき)さん(31)、山田真也さん(26)の3人。
同日夜、妊婦の家族からの要請で救急車が到着したとき、すでに陣痛が切迫した状態だったという。健診している医療機関が同病院だったため、直ちに遠軽へ向かったが「出産のサイン」とされる2〜3分間隔の陣痛が始まり、湧別町内で救急車を止め、お産に臨んだ。
山田さんが運転席で待機。大森さんが携帯電話で同病院の医師からの指示を聞き取り、救急救命士の資格を持つ大原さんへ正確に伝えた。「ゆっくりと時間をかけ、へその緒が首に巻き付いていないか何度も確認しながら分娩介助を試みた」(大原さん)という。
その後もクリップでへその緒を止めた上で、低体温を防ぐため乾いたタオルで何度も何度も新生児の体を拭きながら、同病院に大切な「二つの命」を搬送し任務を終えた。
大森さんは、無事に誕生した証しといえる「おぎゃー」という声を聞いた瞬間のことを、「安堵(あんど)感も喜びもなかった。1秒でも早く病院へ送り届けなきゃと必死だった」と振り返った。
同消防署によると、救急車の搬送時間は紋別から遠軽までが50分ほどだったのに対し、10月以降は最も近い北見までで90分、さらに旭川だと120分になる。
「最善を尽くすのが自分たちの仕事」(同消防署)としながらも、出産時につきまとう、さまざまな「想定外のケース」に言及。「初期陣痛の兆候があった時点で、かかりつけの医療機関と速やかな連絡を」を呼びかけている。(葛西信雄)
引用元:
産婦人科医ゼロ、最寄りの北見へ90分 救急車でお産「今後も起こり得る」北海道新聞