虐待死の危険度が高いとされる0歳児。母親が加害者になるケースが多く、周囲の支えが欠かせない。そこで行政と医療機関が連携し、貧困や孤立で不安を抱える妊婦を産前から見守る取り組みが広がっている。10月に発表された国の統計では、2013年度の虐待死は22人で前年度から6人減。減少傾向が続いており、関係者は「切れ目のないネットワークで支えたい」と力を込める。
 「恋人とは別れたけど、産みます」。福岡市早良区の竹内産婦人科クリニックを受診した少女(17)は、竹内肇(はじめ)院長に切り出した。実家は父子家庭。妊娠10週。竹内院長は「見守る人が必要」と判断し、区役所へ連絡した。
 保健師が訪ねると、自宅は散らかっていた。まずは少女と一緒に掃除。哺乳瓶やベビー服の買い物にも付き添った。産後も定期的に訪問し、悩みを聞いたり、助言をしたり。今、少女は子育てに前向きに取り組んでいるという。
 厚生労働省の統計(13年度)では、児童虐待死の44%を0歳が占め、加害者の6割は実母だった。特に出産直後は、慣れない育児でストレスも膨らみがち。竹内院長は「産前から妊婦と支援者の信頼関係を築くことが重要。特に何度も健診する産科医はリスクに気付きやすく、保健師との橋渡しもできる」と指摘する。
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 貧困、望まない妊娠、地域での孤立…。こうした不安を抱く妊婦ほど虐待リスクが高まるとされ、08年の改正児童福祉法では、産前から支援が必要な「特定妊婦」に位置づけられた。
 以後、母子健康手帳の申請時や産婦人科の受診時に声を掛ける取り組みが続けられてきた。11年には、厚労省が都道府県に医療機関との連携体制を整備するよう通知。日本産婦人科医会も、虐待リスクの高い妊婦の行動例などを記した連携マニュアルを公表した。
 国は昨年度から、産前から相談を受ける「子育て世代包括支援センター」のモデル事業を全国29市町村でスタート。本年度中に150市町村、5年後には全国展開を目指す。児童虐待に詳しい津崎哲郎関西大客員教授は「0歳児の虐待死の減少は連携による“早期発見”の効果だ」と評する。
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 24時間、匿名で受け付けます−。一般社団法人スタディライフ熊本(熊本市)は今年5月から、妊娠・子育て専門の相談窓口を開設した。
 行政と医療機関の連携だけでは存在自体を把握できない「ハイリスク」の母親がいるからだ。婚外子や若年での妊娠など知られたくない事情を抱え、母子健康手帳を申請せず、産婦人科を受診しない妊婦もいる。
 窓口の責任者である田尻由貴子特別顧問は、親が育てられない子を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」を運営する慈恵病院(同市)の元看護部長。「聞くだけに終わらず、相談を糸口に身元を明かしてもらい、実際の支援につなげたい」と話す。

=2015/11/23付 西日本新聞朝刊=


引用元:
0歳児虐待死を防げ 医療機関と行政が連携(西日本新聞‎ )