昔、新生児の生まれて初めての笑顔は、「たぶんガス(おならをしている)に過ぎない(訳注=おならをするときに顔つきがやや変化することから)」として無視されることが多かった。

 しかし現在では、科学者の理解はもう少し進んでいる。

 科学者たちによると、生まれた直後から、新生児の微妙なはにかみ顔は、社会的および情緒的発達の手掛かりを提供する。そして、そのうっとりする、笑ったような表情が誘い出す反応は、その新生児の脳を生涯にわたる社会的交流のためにプログラム化するのに役立つ可能性があるという。

 これまで、ダーウィンをはじめとするさまざまな研究者たちは、赤ちゃんの笑顔の解釈を試みてきた。現代の研究者たちは、心拍モニター、脳スキャンのほか、何千時間分の交流の録画を通じ、生まれてまもない新生児にかなりの認知的かつ情動的な感受性があることを突き止めた。

 最近、研究チームはカリフォルニア大学サンディエゴ校で、赤ちゃんに似たロボットに対し、本物の乳児(生後4カ月)とその母親に見受けられたのと同じパターンで被験者(大学生のボランティア)に向かってほほ笑むようプログラム化した。数学的な計算を通じ、チームは以下の結論を出した。それは、母親が互いにほほ笑み合う時間を最大限にしようとした一方で、乳児は知ってか知らずか、母親をほほ笑ませるのに十分な時間だけほほ笑んだということだった。

 論文の著者の1人であるジャビエル・モブラン氏は、「赤ちゃんと接したことがある人は、赤ちゃんはほほ笑んでいる時、何かを意図している、と思うだろう。赤ちゃんは無作為にほほ笑んでいるわけではない」と話す。

 またバーモント州にあるジョンソン州立大学の発達心理学者の研究によると、生後5カ月の乳児は異様な光景(誰かの頭の上に本が乗っているなど)をおかしいと感じて笑う。周囲に他に笑っている人がいなくても、そうするという。研究を率いたジーナ・ミローt教授(心理学)は、「われわれは、乳児は親が笑わなければユーモアを検知できないという仮説を立てていたが、完全に間違っていた」と話す。

 自発的なほほ笑み

 新生児に見受けられる最も早期のほほ笑みは、眠いときや寝ているときに起こることが大半で、外部の刺激とは一切関連がないようだ。

 生後数時間しかたっていない、眠っている新生児を何がほほ笑ませるのかは謎だ。マイアミ大学のダニエル・メッシンガー教授(心理学)は、この現象について「彼らに聞いても、教えてくれない」と述べ、これはイタリア語で「sognando gli angeli(天使の夢)」と呼ばれると指摘する。研究者たちは「ガス」の選択肢を除外している。なぜなら、これらの早期の一瞬のほほ笑みは、授乳から影響を受けていないように見えるからだ。

 科学者たちは、ほほ笑みにつながる身体的衝動が、脳の原始的な部分に起因すると考えている。このため、脳の発達が不完全な乳児でも可能だというのだ。生後数週間は、ほほ笑みへの衝動が思考や感情のシステムとつながっていない可能性がある。

 早産児は、正期産児と比較すると、無作為で自発的なほほ笑みをより多くする。こういったほほ笑みは、時がたち、それを自らコントロールするようになっていくのに伴い、減っていく。

 社会的なほほ笑み

 生後6-8週間前後で、乳児は外部の刺激に反応してほほ笑むようになる。最初は聞き慣れた声などの音、その後、人の顔など見えるものに反応することが多い。

 このような早期の反応型のほほ笑みが意図的で、意味があるものなのか、それとも刺激の変化によってもたらされるのかについては、議論の余地がある。インディアナ大学のスーザン・ジョーンズ名誉教授(心理学・脳科学)は、「母親にこう言うのは酷かもしれないが、生後6週間で、乳児は壁の上で動いている影を見てもほほ笑むようになる」と話す。

 一方、生後6週間から6カ月の間に、乳児がだんだんと社会的な手掛かりに反応するようになることを示す明確な兆候がある。彼らは一人でいると、ほほ笑みの回数が減り、複数の人といると、ほほ笑みの回数が増えるのだ。その回数はとりわけ、見慣れた人がほほ笑んでいると増えた。ものを見つめて、ほほ笑むパターンには連動性が見られるようになった。



引用元:
赤ちゃんの笑顔から分かること(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版‎ )