札幌市は、性に関する正しい知識を広めようと、中央区の専門学校の生徒を対象にした出前講座「性の健康教育」を始めた。市内の10代と20代前半の人工妊娠中絶率は全国平均よりも高い。市は従来の小中高生と大学生から対象を広げ、若者の望まない妊娠を少しでも防ぎたい考えだ。

 中央区を選んだのは専門学校が集中しているため。出前講座では、中央区の保健師が講師となって、正しい避妊法や、性感染症に感染した場合の症状などについてスライドを用いて解説する。中絶についても、法的にできるのは妊娠22週未満ということや、手術方法を具体的に説明する。

 市は、2002年度から小中高生の授業に各区の保健師らを派遣し、命の大切さを教えている。大学生にも05年度から、正しい避妊法などについて出前講座を行っているが、専門学校生には啓発リーフレットの配布のみだった。

 講座は今年7月に始まり、これまでに福祉系と理容系の専門学校2校で実施。受講前のアンケートで「緊急避妊法」などについて正しく答えた学生は4割と低かったが、受講後は8割に上がった。学生からは「高校までの性教育の授業は身近な問題として感じられなかったが、今は現実問題として聴くことができた」「勉強になった」と好評だった。

 市によると、未成年者(15〜19歳)の13年度の人口千人当たりの中絶率は10・8人で、全国平均の1・6倍、20代前半(20〜24歳)は全国平均の1・5倍の20・5人だった。いずれも過去10年以上、全国平均より高い状態が続いている。

 市は全国平均より高い理由の一つに「札幌市外の女性が、医療機関の多い札幌で処置した件数も含まれるため」とする。しかし、各区の保健センターなどには妊娠後期になって育てられないと駆け込む若い女性や、出産しても育てられず里親に預けたケースもあり、若者への正しい性の知識の普及は大きな課題だ。

 中央区保健福祉部の高田敏明健康・子ども課長は「性に関する正しい知識を持つことが、望まない妊娠や性感染症の予防につながる」と話している。(根岸寛子)



引用元:
高い若年層の中絶率 札幌市、専門学校生にも性教育(北海道新聞‎)