自動車大手のトヨタ自動車が導入を検討している「在宅勤務制度」。特徴は、育児中の社員に限らず、事務系と技術系の社員に幅広く自宅での勤務を認める点にある。誰もが利用できる在宅勤務制度の導入には、何が必要なのか。また、育児中の社員にとってどのようなメリットがあるのか。「トヨタも拡大検討の在宅勤務制度、8年前に導入の日本HPに課題と現状を聞く」と題した前編に引き続き、日本HPで人事・総務本部長を務める羽鳥信一氏に伺った。

まずは試験的に導入を

在宅勤務制度の導入を検討する多くの企業が視察に訪れるという同社。視察中には、「家で仕事をさせるとサボるのではないか」という経営者側の意見、そして「家でできるからという理由で、延々と仕事させられるのではないか」という働き手側の不安をよく耳にするという。しかし羽鳥氏は、「実際にやってみるとこれらの問題はほとんど起きない」と指摘。まずは試験的に導入してみることを勧めているという。

同社でも2007年の制度創設前には、営業職を中心として試験的に在宅勤務の利用を実施。その後、社員の反応や効果を見て、少しずつ、システムエンジニア職や経理など、対象の業種を広げていった。「出社してパソコンを立ち上げれば仕事をしている、ということにはならない。実際に導入してみて、働き方に慣れることが大切だ」と主張した。

「業務効率化」が目的で、男性社員も利用しやすい

それでは、育児中の社員にとって同制度のメリットとは何なのだろうか。この点については、「人生には育児や介護などさまざまなライフステージがある。結果的にそれらを支援できる制度ではあると思う」とした上で、「正確なデータはないものの、育児中の社員の利用率は高い」と分析している。「子どもの通う保育園や学校は家の近くにあることが多い。子どもの用事の前後に在宅勤務を使えば、通勤時間が節約でき、時間を有効に使えるという声はよく聞く」と話してくれた。

さらに注目すべきは男性の育児参加が進む制度であるという点だ。「誰もが業務の効率化を目的に利用できる制度なので、育児中の男性社員も利用しやすいようだ。共働きの社員は増えている。男性の育児参加が進んでいるという実感はある」という。

最後に在宅勤務が可能な日数を増やす予定はないのか尋ねたところ、現時点で日数制限を解除する予定はないという。羽鳥氏は、「Face to Faceに勝るコミュニケーションはない」としたうえで、「出社した方が効率のいい仕事もある」と指摘。あらためて、「制度は権利ではなく業務上必要なものとして導入されている」と語った。

育児中の社員にとって一見厳しい姿勢のようにも思えるが、男女共に利用しやすく、社員間の不公平感も少なく、会社にとっても利益のある仕組みは導入がしやすいともいえるのではないだろうか。育児に携わる時間を増やせるような働き方の選択肢が、多くの企業で広がっていくことを期待したい。


引用元:
イクメン増やす日本HPの在宅勤務制度、その目的とは(マイナビニュース)