精子が十分に動くためには、特定の酵素がカギを握ることを、大阪大学などの研究グループがマウスを使った研究で突き止めた。この酵素の働きを封じ込めることで、男性用の避妊薬の開発につながる可能性も期待されていて、不妊症の原因究明に新たな視点が加わることになった。


 予定外の妊娠などにより、日本では年間約20万件の人工妊娠中絶が行われている。しかし、女性用の経口避妊薬(ピル)はあるものの、男性用の避妊薬の開発にはいまだ成功していない。


 大阪大・微生物病研究所の伊川正人教授らのグループは、カルシウムによって調節される「カルシニューリン」と呼ばれる酵素が、精子の正常な動きを左右することを発見。


 カルシニューリンは全身に存在する酵素で、このうち精巣から出るものの働きを抑える薬を投与すると、マウスの精子の動きが悪くなって、卵子の膜を突き破れなくなることがわかった。


 薬の投与を止めると1週間で生殖能力は回復し、受精して生まれた子供も正常だった。この薬を投与している期間、マウスの精巣の精子形成や精子の数に異常はみられなかったという。


 精巣で作られた精子は、精巣上体という細い管を通って移動する際に、カルシニューリンが働いて、尻尾がよく動くようになる。卵子にたどり着くには尻尾の動きがカギを握るが、これまでどのようなメカニズムで動くのかは明らかにされていなかった。


 伊川教授は「実験で使ったカルシニューリンの動きを抑える薬は、全身の免疫機能にも影響するので、このままでは避妊薬として使えないが、今回の研究によって、男性用の避妊薬の開発や、不妊症の原因解明につながる可能性がある」と話している。


 なおこの論文は米科学誌「サイエンス」電子版に掲載された。


引用元:
男性用避妊薬の可能性 精子の動きを封じ込める酵素を発見 大阪大(ハザードラボ‎)