がん治療に関する国内最大の学会、日本癌治療学会が、抗がん剤治療などで子どもをつくれなくなる可能性がある患者を対象に、事前に卵子や精子を凍結保存しておくためのガイドラインを作ることになり、がん患者が治療後も子どもをもてるようにする取り組みが、国内の医療現場で本格的に広まると期待されます。
毎年、新たにがんと診断される40歳未満の男女は、2万人を超えますが、抗がん剤や放射線など治療法によっては、7割以上の確率で不妊になるケースが報告されています。このためがんが専門の医師ら1万8000人でつくる日本癌治療学会は、治療前に不妊に関する情報を患者や家族に適切に伝え、事前に卵子や精子などを凍結保存しておくためのガイドライン作りを行うことを決めました。
具体的には、白血病や乳がん、大腸がん、それに小児がんなどで治療法ごとに不妊になるリスクがどのぐらいあるのかや、どのタイミングで卵子や精子を保存すれば、治療に支障をきたさないのかなど議論し、2年後をめどにガイドラインを全国の医療機関に周知することにしています。
聖マリアンナ医科大学の鈴木直教授は「医療現場では、不妊に関する情報が患者に伝わっていないことがある。ガイドラインができることで、さまざまながん患者さんの妊娠の可能性を残すことについて、医師が考えるきっかけになると思う」と話しています。 .みずからも子宮頸がんを経験し、がん患者と妊娠に関する団体で相談を受け付けている阿南里恵さんは、「子どもをもてるかどうかは、若い女性にとっては命に代わるぐらいに大切なことだということをがん治療にあたる医師に知ってもらうことは、希望になります。東京でも地方でも関係なく、情報が伝えられ温存治療ができる環境を、まずは広めてほしいです。また、どれだけ広がっても妊娠出来なくなってしまう人もたくさんいると思うので、そうした患者へのサポートも必要だと思います」と話していました。

引用元:
がん患者の卵子や精子 凍結保存指針作りへ(NHK‎)