流産や人工中絶の経験がある女性は、陣痛誘発剤などを使って陣痛を誘発する「分娩誘導」や、帝王切開が必要になる確率が約30%高くなる…。イスラエルの医療機関がこんな調査データを発表した。

 フィンランドでは、中絶を経験した女性の36%が不眠に悩み、25%が精神科・心療内科を受診し、自殺者が増えているという調査データも。知っているようで知らない、知りたくないけど知りたい、そんな人工中絶の現実を紹介する。


人工中絶 日本では年間20万件

 人工中絶が日本で年間どれくらい行われているかをご存じだろうか? 内閣府の調査では、 2012年は20万件にも上った(※1)。この年に生まれた赤ちゃんは104万人なので、胎児となった赤ちゃんのうちの約16%が誕生することなく、死亡したことになる。流産を加えると、この比率はさらに高くなる。中絶すると母体に悪影響を及ぼすことは常識とされるが、確かなデータは日本にはないようだ。


中絶した女性 分娩誘導、帝王切開リスク30%増

 そんな中で、イスラエルのラビン医療センターなどの研究グループが、過去5年間の出産1万5000件を分析。妊娠早期の流産や中絶を1回経験していた1500人と、経験していない女性とを比較し、中絶などによる合併症やリスクを調べた。

 その結果、中絶などの経験がある女性は次回の出産の際に分娩誘導や、胎盤が残ってしまう「胎盤遺残」、そして帝王切開が必要になる確率が約30%高いことが分かった(※2)。

 合併症については、妊娠糖尿病がやや高くなる程度で、ほとんど差はなく、胎児にも影響は見られなかったという。


中絶した女性の死亡原因 半分以上が自殺 出産女性の死亡リスクは最も低く

 一安心、と言いたいところだが、フィンランドに気になる調査結果がある。中絶手術を受けた女性がその翌年に自殺や事故などで死亡するケースが、前の年に妊娠していない女性より24%も多いというのだ。

 フィンランド国立福祉保健研究開発センターが女性の死亡について、1987年から2000年のデータを検証した調査だ。それによると、中絶した女性の死亡原因の半分以上が自殺で、その自殺の確率は前年に出産した女性の6倍、流産した女性の2倍に上ったという(※3)。


フィンランドでも、アメリカでも同様の結果

 その一方で、前年に出産した女性は死亡のリスクが最も低く、妊娠していなかった女性の死亡率の半分にも達しなかった。

 フィンランドだけではない。米国カリフォルニア州の17万3000人の女性についての追跡調査では、調査対象の8年間で、中絶した女性は出産した女性と比べて死亡の確率が62%高かったという。自殺と事故による死亡リスクの高さが特に目立ち、自殺による死亡リスクは154%も高かった。

 経済的な事情や望まぬ妊娠…人工中絶にはさまざまな事情があるはずだ。母体への影響はもちろんだが、フィンランドや米国のデータを突き付けられるとさらに胸が痛む。中絶のため産婦人科を訪ねる前に、もう一度心を落ち着けて考えてほしい。そう思うのは、筆者だけではないだろう。



引用元:
心を体を大切に。統計で明らかになる、人工中絶した女性のその後(CIRCL(サークル))