期待が裏切られた乳児の脳内において神経シグナルが生成されるという報告が、今週掲載される。こうした応答は、遅い段階で、予想外の事象に対してのみ生じており、意識的な認知機構が関係していると考えられる。今回、Sid Kouiderたちは、電極の組み込まれた高密度脳波測定ネットを生後12カ月の乳児に着用させ、測定された脳波信号を調べることで、事前の予想と異なる視覚的事象に対する乳児の脳の応答の研究を行った。乳児は親の膝の上にすわり、2種類の音のいずれかを聞かされ、花か顔の写真を見せられた。乳児は、音の内容をもとに、音からいずれかの区分(「花」か「顔」)を連想するようになった。この実験において、乳児は、先に音を聞かされ、その1.5秒後に写真を見せられた。また、4回の実験のうちランダムに選ばれた1回で、音と対応しない区分の写真を見せて、期待が裏切られたという状況を作り出した。そしてKouiderたちは、写真によって誘発された脳波信号を解析し、比較した。

視覚的事象によって誘発される脳波信号には、それぞれ特異的な初期と後期の特徴がある。この実験では、乳児に正しい写真を見せた場合に脳波の特異的な初期信号が増強され、誤った区分の写真を見せた場合には脳波応答の別の要素(意識的処理と関連している要素)が特異的に増幅された。

今回の研究結果は、驚いた場合や期待を裏切られた場合と関連するシグナルが乳児の脳内で生成されることを示す証拠であり、このことは、予想外の事象からの学習を強く示している。この知見は、乳児における学習モデルにとっての神経基盤といえる。こうした予想外の事象に対する応答の時間経過が遅いことは、驚きが意識的に処理されていることを指し示しているが、この点は、今後の研究による確認が必要とされる。



引用元:
【行動】予想外の出来事に対する生後12カ月の乳児のニューロンの応答(Nature Asia‎)