13年に日本で実施された体外受精の治療件数は36万8764件で、その結果4万2554人が誕生している。いまや特別な治療ではなくなっているが、肉体的、経済的、時間的な負担が大きい治療だけに、少しでも負担を減らせる環境が整っていくことが望ましい。

 東京都に住む中村慶子さん(仮名・35歳)は、結婚後3年経っても妊娠せず、不妊専門のクリニックを受診した。そこで超音波検査、ホルモン検査、子宮卵管造影検査、夫は精液検査を受けた。すると卵管が詰まっていることがわかった。

 卵管は、卵巣から排卵した卵子が子宮に到達する通り道であると同時に、射精された精子が子宮から卵管へと進んで受精し、受精卵が育つ場所でもある。このため、卵管が詰まっていると卵子や精子が通りにくくなり、妊娠しにくい。

 中村さんは医師から、卵管を使わなくても妊娠の可能性がある体外受精を提案された。そこで中村さんは、体外受精を2回実施。しかし妊娠しなかった。体外受精は1回40万円前後かかり、金銭的な負担が大きい。体外受精を継続することに疑問を感じた中村さんは、国立成育医療研究センターの不妊診療科を受診した。中村さんを診た医長の齊藤英和医師はこう話す。

「卵管が詰まって分泌液がたまると水ぶくれのようになります。すると自然妊娠しにくいだけではなく、水ぶくれが子宮内に流れて体外受精で受精卵を子宮に戻しても押し流されて着床しにくいことがあるのです」

 中村さんは齊藤医師から、治療を兼ねて腹腔鏡検査を受けるようすすめられた。腹腔鏡検査は腹部に3〜10ミリの穴を3〜4カ所開け、そこから内視鏡や鉗子(かんし)を入れて子宮や卵巣、卵管を診る検査だ。そのまま手術器具を入れて治療もできる。検査や治療は早くて1時間程度。全身麻酔で2泊程度の入院が必要だ。入院と手術には保険が適用される。

 中村さんは腹腔鏡検査で子宮や卵巣の周囲を調べると同時に、卵管の詰まりを開通する手術を受けた。治療後、1周期休んでからタイミング法をおこなってみたところ、自然妊娠した。

「全身麻酔が必要な腹腔鏡検査は避けたいという方がいますが、卵管の詰まりや癒着がある場合、治療をすると、自然妊娠が望めます。体外受精の安全性はまだ確立されていないので、自然妊娠に越したことはありません」(齊藤医師)

 齊藤医師は、35歳以下でタイミング法や人工授精を数回しても妊娠しない場合、腹腔鏡検査をすすめている。35歳以下だと体外受精よりも妊娠率が高く、たとえ異常がなくても子宮や卵管の周りを洗浄することで、検査後数カ月は妊娠しやすくなるそうだ。

 また子宮内のポリープが受精卵の着床を妨げることがある。超音波検査でポリープの疑いがあった場合は、子宮鏡検査で子宮内を調べるのが有効だ。腟から細くやわらかい管を挿入して子宮内を観察する方法で、外来で15分ほどですむ。実際にポリープなどの異常が見つかった場合は、後日入院し全身麻酔をしたうえで再び子宮鏡を用いてポリープを取り除く。これだけが不妊の原因であった場合、手術後自然妊娠が期待できる。

 しかしこうした検査や手術は、入院設備が整っていないと実施できない。体外受精に進む前や体外受精をしてもなかなか妊娠しない人は、腹腔鏡検査や子宮鏡検査を受けるという手段もあることを知っておきたい。


引用元:
体外受精ダメでもその後自然妊娠 「腹腔鏡検査」はやるべき?(dot.)