不妊の原因はかつて、女性側に原因があるとされることが多かったですが、近年は男性側に原因があることも少なくないことが知られてきました。そんな中、男性の不妊治療技術も飛躍的な進歩を遂げています。最前線をみてみましょう。

◆100人に1人は「無精子」症
不妊の原因のおよそ半分は男性にあるといわれています。
男性側の原因としてはいくつかあり、勃起や射精がうまくいかない「性機能障害」や「射精障害」、精子の動きが悪かったり、数が少なかったりする「精子無力症」や「乏精子症」、また精液中に精子が存在しない「無精子症」などがあります。

中でも治療が難しい「無精子症」は、男性100人のうちおよそ1人の割合。精子はあるのにうまく出てこない「閉塞性」無精子症と、精子を作る精巣自体に原因がある「非閉塞性」無精子症とに分けられます。無精子症の8割以上は、精巣に原因がある非閉塞性です。

◆触れば分かることも
男性の不妊治療では、多くの場合、まず精巣の大きさなどを判定する触診やホルモン検査を行います。
日本人の精巣の大きさは平均で15〜20mlとされ、楕円形の長い部分が4センチほどであれば、15mlはあると考えられます。
3センチ以下の場合は6ml以下となり、成人の場合は要注意レベルです。精巣が小さく、触ってみてふわふわとやわらかい場合は、病院での検査を検討するとよいでしょう。

◆精子一個でも可能性
検査の結果、無精子症と診断されてもあきらめる必要はありません。
閉塞性の無精子症の場合は、精巣の中にある精子をほぼ100%の確率で採取し、人工授精させることができます。
非閉塞性の場合でも、顕微鏡を使った「マイクローTESE(テセ)」と呼ばれる手術があります。
「マイクローTESE(テセ)」では、睾丸(こうがん)を包んでいる陰のうを切開して、精子があるかどうかを顕微鏡で確認。精子が見つかれば、状態のよいものを選んで採取します。
局部を切り開くということで尻込みする男性も少なくありませんが、局所麻酔で手術でき、所用時間は10分から90分ほど。日帰りも可能なほど、患者の負担は少なくなっています。

非閉塞性の無精子症でも、およそ40%の確率で精子の採取ができ、精子が一個でも見つかれば人工授精を経て妊娠できる可能性があります。ただ、まれに出血やウイルス感染、男性ホルモンの低下などのリスクがあることも頭に入れておきましょう。

◆充実する支援制度
医療技術の進歩で、男性の不妊治療にも明るい光が差してきたといえそうですが、問題は費用。簡単な精液検査を除いては健康保険の対象外で、先述のような手術には数十万円の自己負担がかかります。
こうした現状を受け、男性不妊治療の助成制度を導入する自治体も出てきています。

国の不妊治療への支援事業では、1回の治療に対する給付は原則として15万円までですが、これに上乗せする形で、男性不妊治療の助成制度を導入した自治体もあります。

また、男性か女性かに関わらず、不妊治療で支払った自己負担分に対して、助成金の支援に取り組む市区町村も増えてきています。
晩婚化などの影響で、不妊に悩むカップルはいまや6〜7組に1組ともいわれていますが、医療技術も公的な支援も充実する傾向にあります。
気になったり悩んだりしているカップルは、自分が住む自治体のホームページなどで支援制度の詳細を確認しつつ、まずは男女揃って検査を受けてみることをおすすめします。


引用元:
無精子症でも大丈夫!? ここまで進んだ男性の不妊治療(Mocosuku Woman)