産後、数日が経ち、ようやく迎えた退院の日。
入院中に、授乳から、沐浴、産後の赤ちゃんのケアなど、ひととおり教えてもらったし、あとは実践するのみ。あぁ、これからノンストップの育児が始まるのだな。

腕の中にすっぽりと収まる生後間もないこの子に、なんて名前をつけようか…。

そんなことを考えながら、小さな息子を抱いて、病院の外へ出る。久しぶりに浴びる日差しがじんわりと体に沁み渡る。

その日は、とても天気の良い5月10日、ちょうど母の日だった。
「お母さんになったんだなぁ」。嬉しくて涙が出た。



夫と両親が出迎えてくれ、車で実家へ帰る。
里帰り出産だったわたしは、横浜にある実家で夫婦揃って約1カ月程度生活することにしていた。

産後1カ月は、体もガタガタだし体力も低下している。周りの友人から「何もしない方が良い。家事なんてもってのほか!」と、言われていた。

それもそのはず、この時期にいろいろと頑張りすぎると更年期に響くらしい。ならば、こんな機会めったにないし、両親に甘えようかしら。

久しぶりの実家での暮らしは快適だった。
母が全ての家事をこなしてくれるし、父も買い物に出てくれたりと何かと協力してくれる。

わたしは息子が泣けば、おっぱいをあげて、おしめを替えるくらいで
お腹が空けば食べ、眠い時に寝る。
2時間置きの授乳で、まだまだ寝不足状態が続いていたけれど、それでもこんなに快適な生活を送れる実家を天国かと思った。

「あぁ、母がマザーテレサに見える。じゃあ、父はなんだ、大黒様か」

両親は、初孫が可愛くて仕方ないようで、まだ名前のない息子に母は
「ちびたん〜、ちびたん〜」と声をかけて嬉しそう。
強面の父も、孫の寝顔を覗き込んでデレデレしていて、「あぁ親孝行が出来てよかった」と思った。

それにしても、早く名前をつけてやらないといけないなあ。
このままでは、息子は「ちびたん」になってしまう。

妊娠中、夫婦で名前の候補をいくつも考えていた。その数なんと50!
あーでもない、こうでもない、キラキラネームではなく、読みやすい名前にしたいなど…。
顔を見て、候補からしっくり来るものにしようとしていたのだけれど、どれをみてもしっくりこない。

改めて名前を考えた時に、出て来た言葉は「かん」という響き。



タイミングよく、産まれた日は、こどもの日。
家族みんなに歓迎され、わたしたちの歓びとなった息子。
仲間と歓声をあげ、歓喜に満ちた人生を送れますように。

そんな願いを込めて、息子は「歓」と言う名前にすることにした。

こんなにもすっと名前が決まるなんて、思ってもみなかったけれど、息子は、お腹にいたときからみんなに歓迎されていたんだった。

何度、お腹に声をかけただろう。
「出ておいで〜、出ておいで〜」と、産まれる日を指折り数えた日がすでに懐かしい。

これから始まる息子の人生。
命とはなんて尊いのだろう。


引用元:
おかっぱちゃんの子育て奮闘日記 vol.5 「赤ちゃんの名前は?」(excite)