体の不具合を調整する衣料品や器具にも、美しいデザインを志す動きが高まっている。手術後のための下着や義足、車イスなどの開発にデザイナーらが参加して、こうした製品の新しい可能性を探る試みだ。

 ■術後も女性らしく

 淡いバラ色に、手編みのようなレース飾りがついたブラジャー。パリ・コレクションに参加する人気デザイナー、ステラ・マッカートニーが10月に発売する乳房切除の術後につけるブラは、医療用とは思えない、女性らしく繊細で軽やかなデザインが特徴だ。商品名は「耳を澄ませるルイーズ」。

 このブラは術後から乳房再建まで胸の周りを保護する。柔らかいコットン素材製で、ジッパーや前後のホックでサイズを調整できる。幅広の形が胸をすっぽりと心地よく包む。

 ルイーズは、歌手ポール・マッカートニーの乳がんで亡くなった妻リンダ・ルイーズ・マッカートニーの名。彼女はステラの母でもあった。ステラは「手術の後でも、内面も外見も美を保てることで誇りが持てる。そう思って欲しい」とコメントした。

 ブランドとして、デリケートな感覚の商品のためメディアへの露出の仕方を何度も検討したという。「単なる新商品ではなくて、継続して行ってきた乳がん啓発キャンペーンの一環」だからだという。ネット(www.stellamccartney.com)のみの販売で、価格は1万9千円(税抜き)。売り上げは全て乳がん患者と家族のための慈善団体に寄付される。

 ■「見せる」目指して

 今年6月、「Designing Body 美しい義足をつくる」展が都内で開かれた。工業デザイナーでもある東京大学の生産技術研究所・山中俊治教授らが7年間取り組んできた、美しさも重視したアスリート向けの義足などが披露された。義足「Rabbit」は、ピンクと銀色が可愛らしく、「J」の字のような形がシャープな印象。陸上の高桑早生(さき)選手が国内外の大会でつけて走った。

 山中教授によると、いま義足を必要としている人は全国で約1万人。日本の義足は第2次大戦で負傷した人のために簡便で武骨な形が主流だった。なるべく普通の足の形に近づけ、目立たないことが理想だったが、教授らは「隠すより見せる義足」を目指す。試したアスリートたちからは、「以前は義足を見て見ぬふりをしていた健常者の選手仲間が、義足を普通に話題にするようになった」という声が上がったという。


引用元:
乳がん手術後のブラ、義足、車イス・・・機能とデザイン両立へ(朝日新聞)