9月15日は旧敬老の日です。「祝日法」の改正により、2003年から敬老の日は「9月第3月曜日」となりました。9月15日は現在では「老人の日」という記念日になっています。そして、昔からひじきを食べると長生きをすると言われていることから、この日は「ひじきの日」でもあります。ひじきの栄養素を見てみると、長生きにも良さそうですが、何より妊婦さんが必要とする栄養素を豊富に含んでいることに気づきます。


◆カルシウム

カルシウムが不足すると、肩こりや腰痛、イライラ、骨粗鬆症などの原因になります。また、妊娠、出産、授乳にはカルシウムが大量に必要になります。以前はこの時期にはカルシウムを通常より多く摂ることが必要と言われていましたが、妊娠中にはカルシウムの吸収率が高まること、授乳期間が終了した後の半年ほどで母体のカルシウム量はほぼ妊娠前の状態に回復することから、現在は成人女性と同じ1日650mgとされています。とは言え、日本人全般が不足しがちな栄養素であり、特に必要量が増える妊婦さんには意識して摂取してほしい栄養素といえます。

カルシウムを摂取する上で牛乳は優れた食品です。ただし、日本人には牛乳に含まれる乳糖を分解するラクターゼという酵素が少なく、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする「乳糖不耐症」の人が少なくありません。そうした場合、ひじきは心強い食品となります。

一般的に小鉢1皿分で摂ることができるカルシウムの量は、ひじき5gで70mg。これだけで、1食に摂ってほしい量の3分の1以上摂ることができます。


◆食物繊維

体内で消化されずに胃腸を通り抜ける食物繊維は、お通じに良いことが知られています。妊娠中は、ホルモンの影響や胎児が腸を圧迫することで便秘になりやすい時期。食物繊維を摂ることはもとより、その質も重要です。食物繊維には水に溶けにくい不溶性食物繊維と、水に溶けやすい水溶性食物繊維とがあります。例えば、野菜や穀物に多く含まれる食物繊維は不溶性食物繊維です。水分が不足したまま、野菜や穀物の食物繊維ばかり摂っていると、かえって便が硬くなってしまうこともあります。

一方、ひじきに含まれる食物繊維は水に溶けやすい水溶性食物繊維です。不溶性食物繊維:2に対して、水溶性食物繊維:1のバランスが理想的と考えられています。普段、野菜や穀物はしっかり食べているという人であれば、ひじきなどの海藻類に含まれる水溶性食物繊維を意識的に摂取することで理想的なバランスに近づくでしょう。

食物繊維が豊富なごぼうと小鉢1皿分で比較してみると、ごぼう40gは2.3g、ひじき5gは2.2gと、同等の食物繊維を摂ることができます。


◆鉄分

妊娠すると赤ちゃんに酸素や栄養を送るために血液の量が増えます。一方、血液の量の増加に比べ、赤血球はそれほど増えず、また、赤ちゃんに優先的に送られてしまうため妊婦さんには貧血になる人が多いのです。成人女性1日の推奨量は6〜6.5gに対し、妊娠中は8.5g(妊娠前期)〜21.5g(妊娠中・後期)となっており、その必要量が増えることがよくわかります。貧血になると、疲れやすい、息切れしやすい、めまい・動悸がする、肌の血色が悪い、といった症状が出ます。貧血の予防と改善のために鉄分の摂取は欠かせません。

鉄分が豊富なほうれん草と小鉢1皿分で比較してみると、ほうれん草80gは1.6mg、ひじき5gは2.8mg摂ることができます。


このように、ひじきは栄養価の高い食品といえます。「ヒ素が含まれるので妊婦さんは食べてはいけない」という考え方がありますが、一般的な摂取の範囲で健康上の問題が生じることはないでそうです。どの食品にもいえることですが、いずれかの食品に偏るのではなく、さまざまな食品をバランスよく食べることが大切です。その際、ひじきは有力な選択肢のひとつとなるでしょう。

<参考>
ヒジキ中のヒ素に関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/07/tp0730-1.html

執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:山本ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士、サプリメントアドバイザー、食生活アドバイザー。株式会社とらうべにおいて、企業で働く人の食と健康指導、糖尿病などの疾病を持つ人の食生活指導にあたっている

引用元:
9月15日は「ひじきの日」 「ひじき」が妊婦さんに良いって知ってた?(Mocosuku Woman)