前回は妊娠適齢期の観点からライフプランを考えました。今回は、先週、日本の健康寿命が男女とも世界一位だという話題がテレビ等で取り上げられたので、この点から、ライフプランを考えてみることにしました。

このニュースでは、2013年の日本人の男性の健康寿命は71.11歳、女性は74.56歳と報じられました。健康寿命とは、2000年に世界保健機関が健康の指標として提唱した概念で、病気などで日常生活が制限されることなく、自立的に生活できる期間を指します。これが長いほどよいと考えられます。

また、一方、平均寿命も2014年は男女とも過去最高となり、男性80.50歳、女性86.83歳となっており、世界でも有数の長寿国といえます。健康寿命と平均寿命の差は、男性では約9年、女性では約11年ありますが、これは何らかの病気が起こり、病院通いや介護が必要な年月と考えられます。ですので、私たちが目指すべきなのは、健康寿命を延ばし、平均寿命との差をできるだけ短くすることです。

このためによく推奨されているのは働き続けることです。定年後も、現役世代と比較して働く量、時間は少なくてよいのですが、何らかの仕事を続けることがよいとされています。国としても、長く細く働き続けることができるような仕組みづくりが求められます。

私の父や母のことを以前、このコラムの特別編で書かせていただきましたが、彼らは亡くなるその日まで、または1週間前まで医師として患者さんを診ていました。父母を見ていて、これこそが健康寿命を延ばす秘けつだなと確信しました。

さて前回、いろいろなライフプランのうち、出産・育児・教育を選択された方に三つのコースをお示ししました。今回はこれをもとに健康寿命とのかかわりについて考えたいと思います。

一番若いコースを選択した方で、例えば25歳で出産したとします。そして、その子がまた、25歳で子どもを持ったとします。するとこの方は50歳で孫ができることになり、健康寿命に達するまで男性なら21年間、女性だと24年間、健康で孫と付き合うことができます。その後自分を介護してもらうことになっても、子どもだけでなく、孫も手伝ってくれるかもしれません。

2番目のコースで、例えば35歳で出産したとします。そして、その子がまた35歳で子どもを持ったとします。するとこの方は70歳で孫ができることになり、健康寿命までは男性なら1年間、女性なら4年間、健康で孫と付き合うことができます。孫もまだまだ手がかかる時期に健康寿命を超えることになる可能性もあります。

さらに3番目のコースで、例えば40歳で出産したとします。そして、その子がまた、40歳で子どもを持とうとしたとすると、子どもは80歳である自分の介護と、子育てとを同時にしなければならないことになるかも知れず、そのことによって、子を持つことをあきらめる可能性もあります。

これは単に可能性だけですが、有りうることです。しかし、私自身も、若い時にこのようなことまで考えて家庭形成をしたわけではありません。しかし、最近の30年で、第1子の平均出産年齢が4歳も高齢化する晩産化時代です。

自身が子どもを持つ年齢が遅くなることは、子孫のライフプランにも影響を与えるかもしれません。ライフプランを考えるとき、そんなことを合わせて検討することも重要になってきていると思います。


引用元:
《58》 健康寿命とライフプラン