不妊治療の現場では「凍結した卵子」を使うような場面も出てきている。

 日本では、がんの治療前に卵子や卵巣などの凍結保存をさせたり、健康な女性が若いうちに卵子や卵巣を凍結しておくといった技術が注目されている。不妊の可能性も想定して、あらかじめ凍結保存していく技術となる。

 このたび凍結保存した「卵母細胞」を使ったときには、新鮮な卵母細胞を使うより出生率がやや低くなるという報告が出てきている。

 そうした技術の利用を考えるときには参考になるかもしれない。

「凍結技術は成熟」

 米国マサチューセッツ総合病院がんセンターを含む研究グループが、有力医学誌のがん分野版であるジャマ(JAMA)オンコロジー誌のオンライン版で2015年8月13日に報告した。

 卵母細胞は、卵子の元になる細胞で、分裂して卵子になる。海外を中心としてその提供を受けた体外受精が増加している。

 研究グループは、卵母細胞は通常、すぐに胚(受精卵)にするために使われると説明。子宮に移植する分以外は後に使用するために凍結保存されるという。

 今回の報告によると、米国生殖医学会(ASRM)では2013年、卵母細胞の凍結保存(凍結受精卵)技術はもはや実験段階ではないと宣言。世界的な卵母細胞ドナーバンクを推奨する前に、卵母細胞凍結保存の安全性と有効性に関してさらに多くの広範な臨床データが必要と説明している。

全国的なデータを分析

 研究グループは、生殖補助技術学会(SART)の米国体外受精センター2013年度報告書のデータを使って分析している。凍結保存したドナー卵母細胞による体外受精の結果を調べるためだ。米国の500カ所近くの不妊センターの約80%(380カ所)による任意の報告に基づき、2013年に試みられた体外受精の92%に相当するデータを集約したものとなる。

 凍結保存した卵母細胞と新鮮な卵簿細胞を使った場合の出生率と体外受精中止率(受精卵の回収や移植に至らなかった場合)を比べた。

1割ほどの差が付いていた

 1万1000件以上の体外受精の試みのうち、約2200件(20%)が凍結保存によるものだった。

 体外受精の中止は、新鮮な卵母細胞が12%、凍結保存が8.5%だった。

 移植後の出生率は、新鮮な卵母細胞が56%、凍結保存が47%と10%ほどの差がついていた。

 研究グループによると、「凍結卵母細胞で出生率が低かった理由は不明ではあるものの、開始時の卵母細胞の数が少なかったために移植する胚の選択肢が限られたこと、また凍結解凍により卵母細胞が悪影響を受けたことが考えられる」と説明する。

 年齢や不妊歴などの条件を考慮できていない可能性もあるという。日本でも同様なデータをまとめて発表する価値はありそうだ。


引用元:
不妊治療、凍結卵子を使うと出生率はやや低く、体外受精の追跡研究より(不妊治療)