■「お産の痛さ」ってどういうもの?
私が妊娠前の女性にお産のことを教える講座では、「お産って痛いんですよね」「私に耐えられるか心配」と不安を訴える方が後を絶ちません。一方、産後に「もっと痛いかと思いました」「あれ? 今の陣痛でもうお産終わりですか? と言っちゃいました」という女性もたくさんいます。
お産に関する「痛い」「つらい」といったネガティブな言葉がちまたにあふれていますが、それは自身の痛みの体験をデフォルメして、周囲に伝えているものが多いです。今までにない痛みだと言われれば、出産経験がない人だと前代未聞の痛みを想定して待ち構えてしまう……。他の人の経験談で脳内イメージが恐怖感で固定されてしまっているがゆえに、陣痛の痛みが強くなるケースが多いようです。
お産の素晴らしさについて聞く機会があったか否かでも、痛みに差があると思います。自分自身の力を信じて出産できると信じる機会がある場合と、自分では何もなす術がないと思い込んでいる場合とでは、痛みに対する受け止め方は違ってきます。
お産の痛みを恐れているからでしょうか、講座などでは「痛くないほうがよさそうなので、無痛分娩にしたいのですが……」というご質問を受けることもあります。
ここでは、無痛分娩でも自然分娩でも産む人の選択の自由であることを前提としたうえで、無痛分娩と自然分娩についてご説明したいと思います。
■無痛分娩は、いわば「麻酔分娩」のこと
無痛分娩の「無痛」は読んで字のごとく「痛く無い」と書くのですが、言うなれば「麻酔分娩」のことです。硬膜外麻酔で背骨から硬膜に針を刺し、神経を麻痺させるのですが、その針を刺すときがとても痛かったという人もいますし、麻酔のタイミングや分量の調整が上手くいかず、麻酔が効かなかったという人もいます。そのためか初回は無痛分娩を選択したのに、2回目は自然分娩にしたという女性は意外と多いです。
お産の始まりについては、自然分娩は赤ちゃんの肺から分泌される酵素がサインになると言われていますが、麻酔分娩の場合は、いろいろな薬剤の準備があって、陣痛そのものをお薬で起こす場合も多いようですから、事前に主治医にメリット・デメリットを聞いておくといいでしょう。
「出産に対する恐れが病的に強い」「パニック障害を抱えている」など、麻酔を使った出産が有効なケースもあるでしょうが、WHO(世界保健機関)では、麻酔分娩をはじめとする誘発分娩がどんな国でも10%を超えるのは不当だと勧告を出しています。とある国立大学病院で無痛分娩を希望したら、「最初からそう決めずに、まずは自然に頑張ってみましょうよ」と教授に薦められたという妊婦さんもいました。ただ「痛くないほうがいい」という安易な考えで無痛出産に踏み切る前に、もう一歩深く考えてみましょう。
「お母さん自身がリラックスしていた方がいいから」と無痛分娩を選択するのは、あまりにもリスクを調べなさすぎです。安心できるお産のための体作りを考えたほうが赤ちゃんのためにもよいと思います。
■女性はもっとセルフケアに対する意識を高めて
私はできれば自然分娩を選んでほしいと思っていますが、それは「お産は痛いのを我慢することに価値があるから」ということではありません。必要でない限りあまり薬の力に頼らないで、体の生体反応を変えずに産んだほうが、その後の母子の健康や絆づくりの上でもメリットが多いからです。
もちろん、無痛分娩を選んでよかったという人もいるでしょう。お産はどちらが良くてどちらが悪いと簡単に言えるものではありません。命の誕生に「これさえ選べば大丈夫」ということはありません。ただリスクを知ったうえで、後悔のない、やさしい誕生を迎えてほしいと思います。
お産を取り巻く状況は変化し、産科医・助産師不足も深刻化しています。お産にまつわる情報も多種多様です。こういうときこそ女性は、もっとセルフケアに対する意識を高めて、主体的に産むことを考えていただければと思うのです。
文・大葉 ナナコ(All About 出産準備)
引用元:
陣痛の「痛さ」って本当はどんなもの? 選ぶ前に知っておきたい無痛分娩と自然分娩の違い(All About)