妊娠中の膣の中の細菌と早産が関わっている可能性があるようだ。

妊娠女性の「マイクロバイオーム」
 米国スタンフォード大学医学部の研究グループが、米国科学アカデミー紀要のオンライン版で、2015年8月17日に報告した。

 研究グループは、予定日よりも3週間以上早く生まれた場合に早産と言われると示した上で、米国では毎年45万人が早産で生まれていると紹介する。早産は新生児死亡の主要な原因で、その引き金はまだよく分かっていないという。

 予定通りに出産する女性と早産で出産する女性の両方について、妊娠中の「マイクロバイオーム」について知るために、妊娠女性49人について調査した。49人のうち、早産で出産したのは15人だった。

 マイクロバイオームは、微生物の集まりを言う言葉。日本語で言えば、微生物叢(びせいぶつそう)と言い、叢は叢の意味で微生物が集まった状態を表現している。腸内のほか、肌の表面や膣内などにいる微生物も注目される。

 49人についてマイクロバイオームを定期的に調べている。妊娠中は毎週、出産後は毎月。調べたのは、膣のほか、腸の肛門に近い場所、唾液、歯、歯肉。

膣内には5つのパターン
 膣内の細菌の集まりには5つのパターンがあった。

 ほとんどの女性は妊娠中も微生物の内容に大きな変化はなかった。膣だけではなく、他の体の場所でも同様に変わらない。ホルモン、代謝や体重など、体に大きな変化が起きる一方で、微生物の内容は変わらないところに、研究グループは驚きを示す。

 5つのパターンのうち4つは、細菌の多様性がほとんどなく、乳酸菌の仲間が優性になっているパターンとなっていた。早産とは関連がなかった。

 もう一つのパターンは、早産のリスク増大と関連があった。ほかのパターンとは異なり、乳酸菌のレベルが低く、細菌の多様性が高くなっていた。増えている細菌として、「ガルドネレラ」と「ウレアプラズマ」と呼ばれる仲間が確認できた。このパターンが数週間にわたって続いているときに早産と関わっていた。

「プロバイオティクス」で予防の道も
 調査した全ての女性で、膣内の細菌の内容は出産後に変化した。出産後1年まで、細菌が多様になる傾向があった。妊娠して3〜4カ月の間、妊娠前に何らかのイベントがあった可能性があると、研究グループは考えている。

 今後、さらに多くの人数で検証する必要があると研究グループは説明している。最終的には、早産のリスクのある女性を特定するのに役立つと見る。

 微生物の内容を改善する「プロバイオティクス」を含めた治療で早産の予防につながる可能性も考えられるという。

 日本でも注目したい動きだろう。

文献情報
Bacterial community in pregnant women linked to preterm birth, study finds

DiGiulio DB et al.Temporal and spatial variation of the human microbiota during pregnancy.Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Aug 17. [Epub ahead of print]



引用元:
妊娠中の「膣内細菌」は早産に関係か、多様性の高さからリスクを増やす可能性(Medエッジ‎)