乳がん組織の血管内に「アクチビン受容体様キナーゼ(ALK1)」というタンパク質が多く含まれていると、転移しやすいと分かった。

 ALK1の働きを邪魔する薬「ダランテルセプト」は、乳がんの転移を防ぐ新しい分子標的薬になるかもしれない。

ALK1と乳がん転移の関係は?
 スウェーデンのカロリンスカ研究所を中心とした研究グループが、がん研究の専門誌キャンサー・リサーチ誌で2015年6月15日に報告した。

 乳がんは、早期で発見されるほど克服できる可能性が高い。逆に、進行して転移を起こしていると克服は極めて難しい。

 研究グループは、どうにかして転移を防げないかと考えた。

 「アクチビン受容体様キナーゼ(ALK1)」は、さまざまながんの成長に関わっていると知られている。がんが自ら大きくなりやすいように血管を新しく作る「血管新生」を促す。具体的には、血管の内側の「血管内皮細胞」が増えるときに働く酵素となる。「未分化リンパ腫キナーゼ」とも呼ばれている。

 乳がんの転移は、「がん細胞ががんの塊から離れ、血管に進入し、血流に乗って遠くへ転移し、血管から出て、転移先で増殖する」という流れになっている。がん細胞は、血管に入ったり、血管から出たりするときに、血管内皮細胞の間をすり抜けることになる。

 そこで今回研究グループは血管内皮細胞に大きく関わるALK1に着目し、乳がんの転移に関係しているかどうかを調べた。

ALK1阻害でがんの転移を防いだ
 まず、乳がんのモデルとなっている何種類かのネズミで実験をして調べた。

 ALK1の働きを邪魔する薬「ダランテルセプト」をネズミに与えると、乳がんがあちこちに転移する「播種状転移(はしゅじょうてんい)」が抑えられると分かった。さらに、ダランテルセプトと抗がん剤「ドセタキセル」を組み合わせて治療したところ、乳がんの肺転移が防げた。

転移と生存率に関連していた
 次に研究グループは、768人から切除した乳がん組織について、ALK1遺伝子の働きの度合いを調べ、転移状況との関連性を検証。転移を起こした人ほど、ALK1遺伝子が活発に働いていたと分かった。

 さらに、米国立ヒトゲノム研究所と米国立がん研究所による「がんゲノムアトラス研究ネットワーク」という大規模ながんのデータベースを調べ、乳がんにおけるさまざまな遺伝子の働きについて解析をした。

 ALK1遺伝子の働きは、血管内皮細胞に関連した遺伝子の働きに連動して活発になっていた。また、乳がんでALK1遺伝子の働きが活発な人ほど、生存率が低かったことから、ALK1遺伝子は乳がんの予後予測の指標にできると分かった。

治療への応用に向けて
 現在研究グループは、ダラナンテルセプトを乳がんの治療に使いたいと考えて研究を進めている。

 その際、「最も効果的な乳がんの進行ステージで、最も効果的なスケジュールや用量で治療を行いたい」と研究グループは説明している。

 乳がんの新しい治療の選択肢になるか、注目されそうだ。

文献情報
ALK1 Protein May Play a Role in Breast Cancer Metastasis.

http://www.aacr.org/Newsroom/Pages/News-Release-Detail.aspx?ItemID=738#.VYExMEYvs20

Cunha SI et al. Endothelial ALK1 is a therapeutic target to block metastatic dissemination of breast cancer. Cancer Res. 2015; 75: 2445-56.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26077471



引用元:
乳がんの新薬につながるか、血管のタンパク質「ALK1」が転移やその後を左右すると確認(Medエッジ‎)