2013年、日本では45歳を超えた女性の出産が年1100件を超えた。
【時流】2度目の生殖シリーズ後半は、超高齢出産が増える背景と問題点について。
日本産婦人科医会女性保健委員会副委員長の北村邦夫氏(日本家族計画協会理事長)の見方を聞く。



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 日本産婦人科医会が最近公表した2013年人口動態統計のデータは、日本人女性の出産年齢の高齢化がますます進んでいる状況を示した。総出生数102万9816万件のうち、15-34歳の出産数はすべて2010年に比べ減少していたのに対し、35歳以上の出産数は軒並み増加、なかでも45-49歳の出産は1069件と初めて1000件を突破したのだ。一般には“産み終え世代”と考えられる50歳以上でも47件の出産があった。

 この増加を不妊治療の成果と解釈するのは早計だ。2013年に45-49歳の女性に対し実施された中絶は1237件。出産数を少し超える数の妊娠が中絶に帰結していた。50歳以上で中絶が行われたのは22件だった。

産み終え世代の“いきなり妊娠”

 この世代で中絶率が高い理由は何か。北村氏は、「妊娠を望んではいたが、出生前診断で胎児の障害が明らかになったといったケースがあろうことは想像に難くない。だがその可能性を除いてもこの世代の中絶率は高い。やはり“いきなり妊娠”があり得る世代であることを考える必要があるだろう。つまり、避妊に対する意識の希薄さの問題だ」と説明する。

 “いきなり妊娠”とは「月経が途絶えてきて閉経かと思っていたら妊娠だった」「お腹がたるんでいたので妊娠に気づかなかった」というもの。閉経するまでは妊娠する可能性があると分かっていても、閉経の定義を正確に知らない女性が多いのだという。

 40代後半から50代といえばまさに10代の中高生を育てている世代。だが、気付かないうちに週数が進んで中絶できる時期を逸し、出産に至ることもある点では、14歳以下の女児と大差ないという。

40-50代女性に性教育を

 経口避妊薬・ピルや緊急避妊法の普及に尽力してきた北村氏にとって、10代から50代まで「避妊といえばコンドームか膣外射精」という日本人独特の避妊法は男性任せの性文化の反映であり、情報不足の連鎖と映る。

 例えばフランス人女性では、性行動は活発だが妊娠は困る10代はピル中心で、性感染症予防にコンドームを併用する。20代で妊娠を望むようになればピルは中止。出産を終えた30-40代では子宮内避妊具を使い、産み終え世代になったら卵管結紮術を受ける。こうした避妊に関する基礎知識が日本人にはない、あるいは知識があっても生かされないことが多いのだという。

 「女性が主体的に避妊に取り組まなければならないというメッセージが、中高生にもその親世代にも伝わっていない。連綿と続く性教育の欠如の結果かもしれない」と北村氏。幸い、40-50代は婦人科を受診する機会の多い世代だ。妊娠希望がないのであれば確実な避妊の必要があることを、機会あるごとに指導していく必要がある、と同氏は指摘する。

20代で進む“絶食化”、婚姻カップルのセックスレス深刻

 妊娠・出産に関して好ましからざる数字が出ているのは20-30代も同じだ。日本産婦人科医会のデータでは、1975年に約48万件あった20-24歳の出産が2013年には約9万件と、およそ8割減っていた。25-29歳では同約101万件から約28万件へ、7割の減少だ。最大の原因は晩婚化とされるが、北村氏が指摘する要因はむしろ、婚姻カップルの「セックスレス」である。

 北村氏らが2014年に行った「第7回男女の生活と意識に関する調査」(16-49歳、有効回答数1134)では、婚姻関係にあり、かつ過去1カ月セックスをしなかった男性は、25歳から49歳まで全年齢層で3割を超えた。同じく婚姻関係のある女性25-29歳でもセックスレスは4割を超えた。また、婚姻関係に関係なく尋ねた「現在セックスをすることに関心があるか」という問いには、男性17.9%、女性45.2%が「関心がない」と回答していた。

 北村氏は「女性の性欲が男性より弱いのは当たり前だが、これだけの男性がセックスに関心がないというのは、やはりちょっとおかしな社会現象と言える」と述べ、こう漏らしている。

 「日本人の性は草食系ならぬ“絶食系”が増え、肉食系との二極化が進んでいるのかもしれない」



引用元:
超高齢出産をどう受け止める【時流◆】(m3.com (登録)‎)