米カリフォルニア州南部にある不妊治療クリニック9カ所のネットワークであるHRCファーティリティーに来院するカップルのおよそ5組に1組は、妊娠のための支援を必要としない。

 彼らは、「ファミリー・バランシング(家族内の性別の偏りを小さくすること)」、つまり医療のためではなく性別選択のためにやって来る。

 HRCファーティリティーのダニエル・ポター博士(メディカルディレクター)によると、「彼らはたいてい、既に1人、あるいは2人ないし3人の男女どちらかの子がおり」、次は違う性別の子が欲しいと思っているという。

 子どもの性別を選択したい女性は、高額で面倒な処置を受ける。体外受精(IVF)で受精卵を作り、それを体内に移植する前に遺伝子学的な検査を受けるという処置だ。この着床前遺伝子診断(PGD)という検査は通常、遺伝病の検査のために行われるが、受精卵の性別も特定できる。このIVFとPGDの処置には1サイクルで1万5000―2万ドル(約190―250万円)もかかり、多くの医療保険では対象外だ。

ポター博士は、「現在、当院の医療行為で伸びている分野は、不妊の問題を持たない人々を対象にした分野だ」と述べ、その中には同性カップルや遺伝病を持つカップルが含まれると語った。

 治療とは関係のない性別選択には賛否両論あり、米国やメキシコなど数カ国でしか法的に認められておらず、医療団体や不妊治療専門医たちの意見も分かれている。この医療行為の件数を追跡している機関はない。

 ファミリー・バランシングサービスは、多くの不妊治療クリニックのウェブサイト上で宣伝されている。HRCファーティリティーや、ファーティリティー・インスティチュート(ロサンゼルス、ニューヨークとメキシコシティーにオフィスを持つ)などのクリニックによると、このサービスへの需要は拡大しており、とりわけ海外のカップルからの需要が伸びているという。

 他の不妊治療専門家は、これが一握りのクリニックでしか提供されていないニッチな医療だと指摘する。

 2008年に医学誌「生殖と不妊」に掲載された研究によると、インターネット調査の結果、PGDを提供する米国のクリニックのうち42%が治療ではなく性別選択のためにそれを行っていることが分かった。この調査によると、05年に報告されたPGDサイクルのうち9%がこのために行われていた。

 不妊治療専門家の団体、米生殖医学会(ASRM)は今年6月に声明を出し、医師たる者は「性別選択のための非治療的な施術の提供ないし拒否において倫理的義務を負わない」とする立場を表明した。

 しかし、産婦人科医を代表する米産婦人科学会(ACOG)の倫理委員会は昨年、個人的な理由や家族的な理由による性別選択行為に反対する立場をあらためて示した。

 ACOG倫理委員会のシガル・クリプステイン委員長は、「医学の助けが必要なカップルのための技術を、非治療的な理由で使って欲しくない」と述べた。IVFはリスクが最小限に抑えられた非常に安全な医療行為だと考えられているが、あらゆる医療行為と同様に、出血や感染のほか、卵巣の過剰刺激というリスクがないわけではない、と同委員長は付け加えた。

 前出のポター博士によると、医療ではなく性別選択のために同博士が診察する患者の約半数は海外から来ている。同博士は9月にオーストラリアを訪問し、同博士が子どもの性別選択を手助けした約60の家族と再会する予定だ。昨年はロンドンの家族を訪問したほか、今後、中国を訪問する計画もあるという。

 同博士が豪州で再会する予定の元患者の1人がケイティー・カナバンさん(33)だ。カナバンさんは自宅のあるメルボルンからポター博士のクリニックを2回訪問し、IVFとPGDを受けた。カナバンさんは既に3人の息子をもうけており、いずれも自然妊娠だった。カナバンさんと夫は次が必ず女の子になるようにしたかった。豪州では10年ほど前から非治療的性別選択が禁じられている。

 カナバンさんは「わたしたちは息子たちに妹を作ってあげたいと思ったし、わたしたちも娘が欲しいと思っていた」と話した。

 夫妻はIVFとPGDを2サイクル分と渡航費(米国に9週間滞在した費用を含む)に約5万ドルを費やした。「それは一家にとってかなり大きな賭けだった」という。

 現在、夫妻には2歳の女の子のルビーローズちゃんがいる。カナバンさんは「これで、わたしたちの家族は完成した」と話した。



引用元:
男女産み分けを助ける米不妊治療クリニック−半数は海外から(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版‎)