夫婦以外の第三者が関係する生殖補助医療をめぐって、線引きの議論が待ったなしとなっている。国内で第三者からの精子提供で生まれた子はすでに1万人以上と推計され、卵子提供でも神戸市のNPO法人が第三者から無償で卵子を募り、不妊女性の夫の精子と体外受精させる試みを始めた。治療のあり方や親子関係について早急な法整備が求められているが、倫理的な課題も多い。
(藤森恵一郎)
立法化の動きはこれまでもあった。厚生労働省や法務省は2000年代に立法化を検討したが、与党内で「子どもを生む権利を国が規制するのはおかしい」などの反発があり、見送られた。
生殖補助医療について、日本産科婦人科学会は線引きについて見解を示した「会告」を公表し、会員に順守を求めている。しかし強制力はなく、長野県の医師が会告で禁止されている代理出産を行うなど、なし崩しになる可能性がある。
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その後も精子提供や姉妹間での卵子提供、さらに海外での代理出産などが数多く実施された。こうした中、神戸市中央区のNPO法人「卵子提供登録支援団体」(OD−NET)が匿名の第三者からの卵子提供を仲介する国内初の試みは、法整備のめどが立たない現状に一石を投じた。
2013年1月の設立から今年8月1日までに卵子提供を希望する239人、患者125人から問い合わせがあったという。岸本佐智子理事長は「無償なので当初、提供者の応募はゼロかもしれないと思っていた。予想以上の反響」と驚く。
今年、不妊治療クリニックでつくる「日本生殖補助医療標準化機関(JISART)」の倫理委員会で2組の治療実施が承認され、不妊治療クリニックで体外受精が行われた。胚は一時凍結され、年内にも患者に移植される予定。ほかに8組でも治療の手続きが進んでいる。
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13年10月に自民党は党内にプロジェクトチームを設け、再び法整備の検討を進めている。今年8月、第三者の卵子や精子を使った場合の親子関係を規定するため、卵子提供では出産した女性を「母」とし、精子提供では提供に同意した法律上の夫を「父」とする民法の特例法案を了承。今国会での法案提出を目指す。
一方で、同時に検討していた卵子や精子などの提供や代理出産を条件付きで認める生殖補助医療法案については、超党派で今後2年程度かけて検討するとしている。
神戸大大学院法学研究科の丸山英二教授(英米法・医事法)は「生まれた子に、提供卵子・精子で生まれたことや、提供者の情報をどこまで開示するか、代理出産の規制など、多様な意見がある課題は先送りされた形だ」と指摘する。
代理出産は特に賛否が分かれ、さまざまな論点を抱えている。
岸本理事長は「安心して卵子提供ができるよう、議論のまとまった課題から順次法案を提出するなどし、一刻も早くルールづくりを」と要望している。
【生殖補助医療】精液を子宮内に注入して受精させる人工授精▽母体外で受精させる体外受精▽顕微鏡で見ながら細い針で卵子の中に精子を入れる顕微授精▽体外受精させた受精卵を第三者の女性の子宮に入れ、出産してもらう代理出産−などをいう。夫婦の精子・卵子・胚のみを用いる方法と、第三者から提供された精子・卵子・胚を用いる方法とに区別される
引用元:
生殖補助医療、法制化鈍く 「出自知る権利」など課題(神戸新聞)