日本は少子化って、もう耳にたこができるほど聞いていますが、「少子化で何が悪い。満員電車がすいていいじゃないか」という人が必ずいます。


 それはだいたい40代以上の男性。本人は勝ち組でエリートで専業主婦の妻がいて、家事や育児は全くやらず、しっかり子どももいる。なかには孫がいるという人も。そういう人に限って「少子化は悪くない」と言い張るのはなぜなのか?


 「ひょっとして、家事をしたくないのかな……」と最近気がつきました。卵が先か、鶏が先かという感じもありますが、「男性が家事育児をしない」ということは立派な少子化の要因になっているのです。国際的に比較すると、先進国では、男性の家事育児時間が短い国ほど出生率が低く、少子化です。そして、同じく先進国では、女性の社会進出が進んでいない国、女性が稼げていない国ほど少子化です。


 つまり「男が家事や育児をやらなきゃいけなくなることがイヤ」「自分の一番大事な仕事分野に女が進出するのがイヤ」という、テリトリー意識が強い人ほど、「少子化何が悪い!」という議論になるのかな。


 または「変化が嫌いな人」ですね。一生懸命に仕事“だけ”してきた。一家を背負ってがんばってきたのに、急に「イクメン」などと子育てする男性がもてはやされるようになり、仕事“だけ”では評価されなくなった。それどころか家庭に関わってこなかったことが、肩身が狭いようにすら感じる。そりゃ、「少子化何が悪い!」と息巻くお父さんがいても不思議じゃないです。


フルタイム共働き夫婦。家事をしない夫が子どもを欲しがると…
 家事をしないことが、女性が子どもを持ちたいと思えないでいることに“直結した”例が小町にもありました。「家事ができないのに子どもを欲しがる夫…」というトピです。


 このトピ主さんの思考に「なるほど!」と思わせるものがたくさんあったので、ぜひ読んでみてください。


 トピ主さまは30代後半のフルタイム共働き女性。毎日帰宅は20時で、夫は週に5日飲んで帰ることもあるそうです。夫はほとんど家事ができず、トイレットペーパーが切れてもそのまま、掃除は一切やりません。今はトピ主さまがほぼすべての家事を引き受けているのでうまく回っています。しかし問題は、「最近になって夫が子どもをほしがるようになったこと」!


 「結婚当初はお互い仕事が面白くなってきた時期でもあり、子どもはいらないねと話していました」とのこと。トピ主さまは、子どもを持つかどうかは「どちらでもよい」と思っているそうです。


 「私のほうは夫一人の世話をしている分には大して苦ではありません。ただ、ここに赤ん坊が加わるとちょっと手に余るし無理だなと思っています。そもそも年齢的にこれから産めるのかも疑問ですし、最近体力にも自信がありません。夫にこのような懸念を話しても『大丈夫、子どもが生まれれば自然に出来るようになるし、何とかなるから』とやたら脳天気ですが、まったく信用がおけません。どうしたものでしょうか」


 これに対して多くの方が「自然にできるようになるなんて、無理!」と大合唱。そうなんですよね。今は大きな子どもがいるような状態ですが、子どもは育てないと一人前にならないんです。


トピ主さまの“大実験”
 その大合唱を受けて、トピ主さまはどうしたか? そこが大変ユニークなところです。相手が変わらないなら、自分を変えようと思い立ったのです。


 「夫に変わってもらうよりも自分が変わればいいと思い、週末は家事をサボりました」。これはもう事件に突入したといっていいでしょう。「『子どもができたら家事をしなくなると思うので、それでも自分が平気か試してみる』と夫に伝えました。生ゴミがにおいはじめ、洗濯物はソファに山積み、ゴミ捨て日に間に合わなかったゴミが玄関に残っています」


 トピ主様の努力できれいに保たれていた家ですが、みるみるうちにトイレやバスは汚れ、「夫の独身時代の一人暮らし」状態に。夫は「頼んでくれたらやるのに」と言うのですが、頼むと「嫌な顔をするからいや」とトピ主さまは訴えます。


 そりゃそうだ。日本では「笑顔でほめないといけない」とされていますが、嫌な顔を毎回見るのは嫌なのが人間です。


 「『あなたの嫌そうな顔見るのは私が嫌。家事を放置しても自分が平気かどうか試してみたい。子どもについてはしばらく迷うね』と言うと、気まずいのか言葉に事欠いたのか向こうから話題を変えたので、私もそのままにしています」というトピ主さま。徹底しています! 素晴らしい。あくまで「夫の家事の水準で自分が生活できるのか試す」ための実験ですから。


 さらにその後、“家事をサボる実験”を始めて2週間後の報告がありました。トイレ、バス以外は何とかなるもので、二人で外食する機会が増え、会話も弾むようになったとか。


 「嫌な顔をされるとこちらもイライラするので、頼みごとは『トイレットペーパー買ってきて』など全部LINEで頼むことにしました。頼めば確かにやってくれます。こちらも嫌な顔を見ずに済むので万々歳です」


 その他の掃除などはあきらめて外注と割り切る。子どもについてはふっきれたトピ主さま。「(夫も)少し現状認識ができてきたのかも。子どもの話をきっかけに、我が家なりの生活を再考するきっかけになったのかもしれません」とまとめていました。


 この実験、すごいですね。相手の水準に自分を落とし、それぞれがどう感じるか試してみる。逆に日本の男性はこれぐらいしないと、「わからない」のでしょう。


 実は友人にもこういうワーキングマザーがいました。子どもが生まれたのに一切夫の協力がなかった彼女は、耐えきれなくなって「夫のための家事はいっさいしない」と2年間のストライキに出たのだそうです。夫はかなり変わり、彼女はいまや役職にも就いています。


 日本の男性を変えていくのは、かくも至難の業。飴(あめ)と鞭(むち)をうまく使いこなさねばなりません。今回のトピ主さまの場合は「鞭」ですが、夫婦がちゃんと向き合って、現状をふまえた上で新しいスタイルに移行しつつある。なんとなく、赤ちゃんも遠くないような気がします。



引用元:
家事嫌いの男性…これも少子化の原因なんだよねー(読売新聞‎)