体外受精などの生殖補助医療は、他の不妊治療法で妊娠しない場合に選択される治療手段で、これによってそれまでの治療法よりも高い妊娠率が期待できる、と皆さんは考えておられると思います。
確かに、たとえば、卵子や精子の通過場所であり、受精の場所でもある卵管が両側閉鎖していたら、他の治療法よりも体外受精の治療法を選択したほうが妊娠率のアップにつながります。また、他の方法は選択せずに、治療の最初から体外受精を選択してもよい場合も多くあります。精子が極度に少なく、精子運動性も極度に低い場合は、最初の治療から体外受精または顕微授精を選択したほうがよいこともあります。
しかし、最近生殖補助医療を受けている方の中には、検査では明らかな不妊原因が見つからない方も多くいます。すなわち、自然に妊娠してもおかしくないのに、タイミングをとってもなかなか妊娠しない人です。
さて、今回ご紹介する論文は、自然に妊娠してもいい人で、タイミングをとってもなかなか妊娠しない人に@排卵誘発をしながら人工授精を行った治療(@法)、A多胎妊娠を防ぐために、通常の排卵誘発を行いながら選択的単一胚移植をした体外受精(A法)、B自然周期に近い排卵誘発を行いながら体外受精(B法)をした際の多胎妊娠の率を検討した論文です。この論文ではそれぞれの治療を12カ月間行った時の多胎妊娠発生率を比較していますが、正常出生児を得られた確率も検討しています。
この3つの治療の比較では、選択的1個胚移植法(A法)も、マイルド卵胞刺激法(B法)も、調節排卵刺激法+人工授精法(@法)に比べて多胎率を減少させなかったとの報告でした。患者さんの背景としては、18歳から38歳の女性で、避妊しないのに12カ月間で妊娠が成立しない▽月経周期が正常▽少なくとも一方の卵管の通過性が証明されている▽夫の精液検査は正常、とされています。
この研究で私がとても興味を持ったことは、図に示すように12カ月間の治療で健康児の累積獲得率が3つの方法で有意差がなかったことです。各治療法とも、治療の合間に、自然妊娠や他の治療法も含まれるので複雑ですが、統計的に考えると、いわゆる原因不明不妊、または加齢に伴う不妊の場合は、3つの治療のうち、どの方法を用いても、ある一定期間での治療成績を比べると有意差を認めないということになります。
このことからわかることは、自分の体の状態をよく検査し、原因不明不妊の場合はただちに体外受精だけを考えるのではなく、それぞれの状態に応じてどの治療法を選択していくべきか、よく考えることが大切であるということだと思います。
引用元:
体外受精は人工授精よりも妊娠率を向上させるか? (apital)