10代の少女を対象にした子宮頸(けい)がんワクチン定期接種の積極的勧奨が中止されてから2年が過ぎた。接種後の体の異常との因果関係や安全性の議論は続き、接種再開の可否を決める国の検討会や患者の救済も止まったままだ。現状を取材した。

 ●「心身反応説」に異論

 厚生労働省が専門家検討会の判断を受けて接種勧奨の中止を決めたのは2013年6月。4月に始まった定期接種の前後から、痛みなどの報告が相次いだためだった。

 検討会は14年1月、体の異常がワクチン成分ではなく接種時の痛みや不安による「心身の反応」との見解をまとめた。その後、医療界でワクチンを巡る議論が活発化。西岡久寿樹(くすき)・東京医科大医学総合研究所長ら難病治療研究振興財団(坂口力理事長)のグループは同年9月、体の異常が多岐で長期間にわたり、脳神経が炎症を起こしているとの見解を学会で発表し、「心身の反応」説に異論を唱えた。

 また、厚労省研究班(代表・池田修一信州大教授)の分析によると、検査した患者の大半の「HLA(ヒト白血球型抗原)型」が同じだった。免疫関連の遺伝子が発症に関わっている可能性を示す結果だ。

 海外ではどうか。厚労省によると、副作用を理由に接種が中止された国はなく、世界保健機関(WHO)は6回にわたりワクチンの安全声明や報告を出した。予防効果がより高いとする米メルクの新ワクチン「ガーダシル9」も既に米国、カナダ、欧州連合(EU)、オーストラリアで承認され、日本でも今月3日に承認申請された。

 一方、西岡所長らのグループによると、デンマーク、英国、豪州でも、日本と似た神経の異常を中心とする副作用が報告されているという。薬害対策弁護士連絡会は3月に公表した法律意見書の中で、日本でワクチンが最初に承認された09年10月時点で、神経障害や全身症状を起こす危険があることが海外の論文で知られていたと指摘する。

 ●がん患者拡大懸念も

 議論が続く中、ワクチン接種の勧奨は再開すべきなのか。日本産科婦人科学会前理事長の小西郁生・京都大教授(婦人科腫瘍学)は「勧奨の中止が続けば、十数年後には世界で日本だけが子宮頸がんになる人が増える可能性がある。だが、これほどワクチンへの懸念が広がった現状では、早期の再開は難しいというのが実感だ」と指摘。再開に向けては、副作用に関する詳細な情報公開や患者が安心して医療を受けられる体制などの環境を整えたうえで、ワクチンのリスクと恩恵を議論することが重要だと指摘する。

 体の異常に苦しむ患者の救済も進んでいない。厚労省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)が設ける被害救済制度は、審査手続きが事実上止まり、独自に医療費の自己負担を軽減する自治体が広がりつつある。全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の池田利恵事務局長は「因果関係を証明する研究を進めてほしいが、その後の救済では時間がかかり過ぎる。ワクチン制度全体の信頼性を取り戻すためにも、国は早期に全面救済してほしい」と訴える。【斎藤広子】

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 ◇子宮頸がんワクチンを巡る主な論点
 ・接種後の体の異常とワクチン接種に因果関係はあるか

 ・長く続く痛みなどの原因は「心身の反応」なのか

 ・接種後1カ月以上たってからの発症を副作用とみるか

 ・ワクチンの子宮頸がん予防効果はどの程度か

 ・患者の追跡調査をどの範囲まですべきか

 ・健康被害救済が止まったままでいいのか

 ・患者の治療体制をどう整備するか

 ・接種勧奨を再開すべきか

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引用元:
くらしナビ・医療・健康:子宮頸がんワクチン勧奨中止から2年 再開可否、議論足踏み(毎日新聞‎)