お産を扱う産科医が福井県内で減っている。2004年には82人だったが、14年には68人に、出産取扱機関も27施設から19施設に減った。奥越では07年以降、ゼロの状態が続いている。産科開業医の平均年齢は60歳を超え、後継者不足も深刻だ。加えて女性の初婚年齢は上がり、医師にとっては出産と訴訟両方のリスクが高く、人材不足に拍車をかけている。
■お金で示談に■
「開業医になってから、外泊は一度もない」。県内の産科医、小林春樹さん=仮名=は言う。妊婦の体調が急変したときに即対応しなければならないからだ。連休を取るには、医師を雇う必要があるが「どこの病院より給料を高くしても、リスクが高く、なり手はいない」。家族旅行は夢のまた夢だという。
あるとき、体調が急変した妊婦が運ばれてきた。この時点で死産は確定的だったが、総合病院に搬送した。結局、妊婦は子宮破裂で子宮を摘出。妊婦側は現在、訴訟の動きをみせているという。小林さんは「自分は適切な対処をしたと確信している。でも裁判になるぐらいなら、数百万円払ってでも示談にしたい。忙しい中での裁判は耐えられない。評判だって気になる」と打ち明けた。
小さな命を失ったときの家族の失望は計り知れない。だから、医師としての仕事をまっとうしても納得してもらえないことがある。小林さんは「もう分娩(ぶんべん)はやめようかなと思うときもある」と話す。
13年に改訂された県医療計画では、県内の産科開業医の平均年齢は63歳で「分娩取扱医療機関は今後さらに減少することが懸念される」と指摘している。
■高齢出産増加■
女性の初婚年齢は上昇傾向にある。13年の県内女性の平均は28・7歳で、95年比で2・8歳アップ。これに伴い第1子の平均出産年齢は27歳から30歳に上がった。
13年版厚生労働白書によると、女性の自然妊娠力は30歳ごろから低下し、35歳前後からは流産率も上昇。妊娠高血圧症候群など、妊娠・出産のリスクも高くなる。
県は04年、リスクの高い妊婦や新生児に、高度で専門的な医療を提供する総合周産期母子医療センターとして、県立病院を指定した。数百グラムの低体重児などを受け入れる新生児集中治療管理室(NICU)は11床備える。小さな体の新生児の心拍数などは24時間チェックされ、1人の新生児を、複数の看護師が担当する。
現在、産科医は8人だが、同病院母子医療センターの野坂和彦センター長(60)はそれでも「医師の数は足りない」。精神的にも肉体的にもつらい仕事だけに、人材確保はままならない状態が続く。
県内には産科医療の中核となる周産期母子医療センターが7病院ある。これらの病院で出産する割合は06年度は36・5%だったが、13年度には44・2%と、大幅に上昇した。
野坂センター長は「産科医不足の中、出産は中核の病院に集約されていくだろう」と見通す。
引用元:
人口減少社会、産科医不足が深刻化 福井、開業医の平均年齢は60歳超(福井新聞)