子ども時代に何らかの理由から卵巣を取って凍結保存しておき、その後に出産にまで至るのか。

 現代では、既に可能となりつつある。この6月には、卵巣組織を移植した女性の出産が報告されている。

骨髄移植前に片方の卵巣を摘出
 ベルギー、ブリュッセル自由大学のイザベル・デメーストレ氏らの研究グループが、ヒューマンリプロダクション誌オンライン版で2015年6月10日に報告したものだ。

 成人後に摘出した卵巣組織を移植して無事に妊娠したというケースは見られるが、子ども時代に摘出した卵巣組織を使ったケースはそれまでなかった。 この女性はコンゴ共和国出身で、5歳のときに赤血球の形が文字通り鎌の形になる「鎌状赤血球症」と診断を受けた。

 11歳でベルギーに移住後、骨髄移植による治療を勧められたが、骨髄移植では拒絶反応を防ぐために化学療法や放射線療法が行われる。卵巣の機能が永久に働かなくなる可能性があるため、女性は13歳11カ月のときに右の卵巣を摘出。一部を凍結保存した。その当時まだ生理は始まっていなかったが、胸の膨らみから10歳のときに思春期が始まっていた兆候があった。

 骨髄移植は成功。しかし拒絶反応の起こる「移植片対宿主病(GVHD)」にかかったため、免疫抑制薬を18カ月間飲み続けなければならなかった。残った卵巣の機能は失われ、15歳のときに生理を始めさせるためにホルモン補充療法が行われた。

卵巣機能に影響ある事例は多い
 それから10年後、不妊治療の診察を受けたこの女性に対し、ブリュッセル自由大学病院の医者がホルモン補充療法を止めて、凍結していた卵巣組織の一部を残っている左の卵巣に移植。移植から2年以上が経った27歳のときに妊娠し、2014年11月に体重3140グラムの元気な男の子を出産した。

 研究者は「卵巣機能を壊す可能性がある治療を受けなければならない病気の場合、卵巣組織の凍結が不妊を防ぐ唯一の方法である」と語っている。

 思春期前の子どもにもこの方法が可能かどうか、さらに研究を進める必要があるとのことだ。

 日本でもがん治療のほか早期に卵巣機能に影響のある医療行為をする場合は多い。卵巣凍結は今後、選択肢として注目されるだろう。

文献情報
First live birth after transplantation of ovarian tissue removed and frozen during childhood

http://www.eshre.eu/Press-Room/Press-releases/Press-releases-2015/Live-birth-after-ovarian-freezing.aspx



引用元:
凍結保存した卵巣で移植後に出産、子ども時代の摘出として世界初の事例から (Medエッジ)