生まれてすぐの赤ちゃんに対して難聴の疑いがないかを調べる「新生児聴覚スクリーニング検査」。難聴に早めに気付いて療育を受ければコミュニケーション能力が高まるとの報告がある。ただ、実施率には地域差があり、学会などは全ての赤ちゃんが検査を受けられるよう国に働きかける。

 絵が描かれた紙を手に言語聴覚士が女児(3)と男児(4)に「これは何?」と問いかける。2人は「スイカ」と元気よく答える。富山県高志通園センター(富山市)で実施されている難聴の子どもたちの療育だ。

 2人は誕生直後の聴覚検査(新生児聴覚スクリーニング)で精密検査が必要と判定された。耳鼻咽喉(いんこう)科での詳しい検査で難聴と判明。男児の30代の母親は「生後3日で告知を受け、泣き崩れた」と振り返る。

 難聴の場合、まず補聴器をつけて様子を見る。補聴器で十分に聞き取れないと判断されると音を電気信号に変換して聴神経に伝える装置「人工内耳」を検討する。2人は1〜3歳のときに両耳に人工内耳を取り付ける手術を受けた。

 同センターには0歳から通う。聞こえるのはもともと機械的に合成された音なので言葉として認識するには訓練が必要だ。療育では、遊びながら言葉を聴いて話すことを繰り返し、人との会話を実践していく。

 2人の母親は「ここまでコミュニケーションをとれるようになった。不安もあるが、さらに伸ばしてあげられるようにサポートしたい」と口をそろえた。

 生まれつき難聴の赤ちゃんは2千人に3人ほどの割合でいると言われる。ただ、4、5歳になって気付くこともある。難聴の原因は約半数が遺伝性。妊娠中に母親が風疹になった場合や原因がわからないこともある。

 検査は生後2〜4日に行い、専用の機器で耳に音を流し、脳波や返ってくる音を調べる。痛みはなく、数分〜10分ほどで終わる。

 2007〜11年度に319人の難聴児を対象にした厚生労働省の戦略研究では、生後半年以内に療育を始めると、言葉を使うコミュニケーション能力の指標が高くなる確率が3倍以上になるという結果が出た。



引用元:
難聴、生後すぐ検査を 早期療育で言葉の発達に効果 (朝日新聞)