妊娠初期の母親の甲状腺ホルモンの血液中の値が低いと、生まれてくる子どもの注意欠如・多動症(ADHD)の症状と関連していると分かった。

 オランダ、エラスムス・メディカル・センターのT・モデスト氏らの研究グループが、小児科分野の国際誌ジャマ(JAMA)ペディアトリクス誌において2015年7月6日に報告している。

注意欠如・多動症(ADHD)との関係は
 妊娠中の母親の甲状腺ホルモン不足は、子どもの認知発達に影響を及ぼす可能性がある。しかし、出生前の甲状腺ホルモン不足が子どもの行動に及ぼす影響については、あまり研究が行われていなかったと研究グループは説明している。

 研究グループは、妊娠初期に母親が中度の甲状腺ホルモン不足だった場合、子どもの注意欠如・多動症と関連があるかについて検証した。

子どもが8歳時点での検証結果
 この研究は、オランダの出生コホート研究「ジェネレーションR」内で行われ、2002年4月1日から2006年1月31日に生まれた子どもを青年期まで追跡した。母親の甲状腺値に関するデータがある親子4997組のうち、77.5%にあたる3873組を対象として詳しく調べた。

 母親の低甲状腺ホルモン値(甲状腺刺激ホルモン、遊離サイロキシン、甲状腺ベルオキシダーゼ抗体)を、平均妊娠13.6週で測った。子どもの注意欠如・多動症の症状は、「コナーズ評価尺度」と呼ばれる方法で8歳時点に評価した。

子宮内で受けた影響が神経の発達に?
 性別、民族、母体年齢、妊娠に関する教育レベル、収入といった子どもと母親の条件で調整した上で分析した結果、妊娠初期の母親の低甲状腺ホルモン血症は、子どもが8歳時点での注意欠如・多動症の高スコアと関連していた。

 注意欠如・多動症の傾向を示すスコアが7%高まるという結果。

 この結果は、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体値が高い女性を除いてもほとんど変わらなかった。子どものIQと一緒に存在しているならば自閉症症状で調整すると、関連性は弱まった。

 子宮内で受けた影響が神経の発達に関係する可能性はある。

 妊娠中のホルモン状態は子どもの生まれてからの精神状態の観点からも気をつけると良さそうだ。

文献情報
Modesto T et al. Maternal Mild Thyroid Hormone Insufficiency in Early Pregnancy and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Symptoms in Children. JAMA Pediatr. 2015 Jul 6. [Epub ahead of print]

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26146876



引用元:
母親の甲状腺ホルモン不足、生まれてくる子の8歳時点のADHDと関連 (Medエッジ)