「のぶさんの患者道場」では、私たちが開催しているいくつかの対話の会から、患者の皆さんのお役に立ちそうな話を、みなさんに紹介しています。
先日、生体肝移植を受けた経験があるお子さんの親の会「グレフキッズ」に招かれ、「第1回未来カフェ」にファシリテーターとして参加させていただきました。対話のテーマは「こどもの未来への不安や夢」。
今回は、そこに参加された親御さんの対話で出された意見をまとめます。
■治療に向けた複雑な気持ち
病院との付き合い方
生体肝移植の治療が可能な病院が少ないので、通院や家族の生活を考えると、通える病院は限定されてしまいます。たとえ、そこの病院や医師の治療方針と異なったとしても、今後の関係性を考えるとどうしても医師の立場の方が強くなるようです。
また、小児病院の場合は、子どもが大人になると入院が難しくなり、長年培った関係性を切ることになるという現実もあります。
このように病院との付き合い方は、ずっと悩まされる不安要素のようですが、一方でよい主治医との出会いは希望や期待にもつながるとのことです。
この分野の医療はいまだ治療法が確立されたとは言えませんので、世界を先導する治療法の確立に期待している、という意見も出されました。
身体の管理
子どもの成長に伴い、自分の身体が周囲の友達と少し違うことに気づくことでしょう。通院や服薬の継続、手術痕があることなど、親は子どもの年齢に応じて現状を理解させていかねばなりません。
子どもが病気を理解できるか、いや、親自身が理解させてあげられるか、また、親の目が届かなくなる年齢になって、自らで身体の管理ができるのか、メンタル面でも強くなってくれるかなど、期待と不安が入り混じっているようです。
さらに、服薬を継続しなければならないことから、今はわかっていない副作用のリスクなどにも不安に感じるという方もおり、まさに歴史の浅い疾患ならではの気持ちが現れています。
■学校生活への不安と強み
入院・通院による学習の遅れ
繰り返す入院や通院のために学校を休めば、当然学習の遅れが生じることになります。
長期入院の場合は院内学級などの制度が使える病院もありますが、短期入院や通院ではサポートする体制はありません。親にサポートできる時間があるならば対処法もありますが、そのようなご家庭ばかりとは限りません。
友達との関係性
移植を経験している子どもたちは、腹部に手術痕があります。プールに伴う着替えなどの際に、その痕について友だちにからかわれ、それがいじめにつながるのではないかという不安があるようです。
また、男の子だとふざけ合うことで、手術した部分に衝撃が加えられるリスクがあるなど、友達との関係性に関する意見も挙がりました。
多様性への理解がある強み
幼いころから医療への関わりを余儀なくされたことや、医療の現場でいわゆる弱者とのつながりを数多く経験できることから、マイノリティと言われる方々への理解があると期待できます。
この「多様性への理解」があることは強みであり、誰とでも友達になれる素質が育まれるはず。それは、心の友を作れる力にもなり、その友はかけがえのない宝になることでしょう。
苦労したからこそ得られる宝。それは大きな夢です。
■自立への期待・不安と悩み
身体への興味
周囲の仲間とは少し異なる自分の身体。そこを劣等感と感じるのか、興味を持つのかで、子供の将来は大きく異なっていきます。
自立していくうえで、身体への興味を持たせることが大切なようです。そして将来、自分の経験を医療分野でいかそうとする方がいるかもしれません。
成人後の生活
生体肝移植を受けて成人している方は、まだ多くありません。成人後、どのような生活があるのか、事例がありません。飲酒、結婚、妊娠……など、一般に大人になると経験するライフイベントを積み重ねられるのか、成人後の生活に対する漠然とした不安を感じているようです。
成人になるまでの成長段階でも、どこまで親が踏み込んでいいのか、不安、悩みは尽きないようです。
■家族との関係性の見直し
夫婦の関係性の見直し
通院や、毎食後に必要となる服薬支援など、他の子どもたちに比べれば多少手はかかってしまう子ども。その子どもを通して、夫婦の関係性が見えてくる、というご家庭もあるようです。
もっと互いに手伝い合えればいいけど、そうはいかない現実。通院には原則として夫婦二人で行くようにしているという方もいれば、逆に仕事が忙しくて子育てには関与してくれないという方も……。
親族・兄弟への理解
子どもからみて、祖父・祖母などを含めた親族や、兄弟への理解を得るのもご苦労があるようです。
特に患者の兄・姉に関しては、入院などで手がかかる弟・妹に親の留意の比重が偏り、疎外感に近いものを感じるご家庭もあるよう。病気を通してどのように輪を強めていくのか、家族内での工夫が必要かもしれません。
■レジリエンスへの期待
キーワードとして「レジリエンス」という言葉が出されました。
レジリエンス(resilience)は心理分野でつかわれる言葉で、翻訳すれば「乗り越え力」「抵抗力」「心の耐久力」などとなります。
いくつかの不安や夢を挙げてきましたが、要は子どもに「レジリエンス」を身に付けてもらうことにまとめられそうです。その力こそが期待なのですね。
これは、疾患の有無などは関係なく、どの子どもでも、いや大人も含めて、必要な力だと私は感じました。
さて、いかがでしょうか?
生体肝移植の経験がある子どもたちの親が集まり、不安や夢を共有したい――今回はそういう依頼を受けて、ファシリテーターを引き受けました。各々の解決法については、今後カテゴリーごとに対応していくとのことでした。
私たちが開発した手法を患者会の中でこのようにご活用いただき、課題の共有に役立てていただけたことを嬉しく思います。
次回の「のぶさんの患者道場」は、私たちが手掛けるペイシェントサロン活動が「第4回杉浦地域医療振興賞」を受賞しましたので、その詳細をお伝えします。
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引用元:
生体肝移植を受けた子どもたちへの不安と夢(朝日新聞)