◇抗がん剤副作用の「脱毛」実態、初めて明らかに

 乳がんで抗がん剤治療を受けた女性の98%が頭髪などの脱毛を経験し、抗がん剤投与を終えてから5年たった人の中にも、髪が十分に生えそろわずかつら(ウイッグ)を使用している人が約10%いるとの調査結果を、専門医らのグループがまとめた。大規模な患者調査で抗がん剤の副作用による脱毛の程度や経過の実態が明らかになったのは初めてだという。

 調査は2013年4〜10月、乳がんの手術後に抗がん剤治療を受けて5年以内の女性を対象に実施し、全国の47医療機関に通院する約1500人から回答があった。平均年齢は54.7歳だった。98%が頭髪などが抜けたと回答し、脱毛が始まったのは抗がん剤投与開始から平均18日後だった。94%が頭髪の8割以上が抜け、眉毛、まつげが8割以上抜けた人も約60%ずついた。

 再び頭髪が生えてきたのは、投与終了から平均3.4カ月後。投与終了から2年たった人の約60%は頭髪の8割以上が回復したが、5年たっても3割以下の回復にとどまった人も約5%いた。高齢になると回復が遅くなる傾向があった。かつらの平均使用期間は約1年だった。

 国立がん研究センターが実施した抗がん剤の副作用の苦痛度調査(09年)によると、「頭髪の脱毛」は男性では18位だったが、女性では1位。

 調査を担当した国立病院機構仙台医療センター乳腺外科の渡辺隆紀医長は「医療関係者に実態を知ってもらい、ウイッグの情報提供や眉毛の描き方の指導などの支援につなげてほしい。患者ががんとの診断や治療で混乱している中で、脱毛についてどのように伝えるのか慎重に検討する必要がある」と話す。【下桐実雅子】

引用元:
<乳がんで抗がん剤>98%に脱毛 5年後も10%がかつら(毎日新聞)