今回は当センターの不妊治療の特徴の一つとして、腹腔鏡検査についてお話ししましょう。
タイミングや人工授精の治療を何回行ってもなかなか妊娠しない方が対象で、私どもはこの検査を積極的に行っています。おなかの中に異常が見つかり、これを取り除くことで妊娠される方が多くいます。異常が見つからなくても、おなかの中を洗うだけでも効果があります。
卵巣で卵胞が発育し、この卵胞から卵子が排卵し卵管に入りますが、腹腔鏡検査によって卵胞の発育環境がよくなることや、卵子が卵管に入りやすくなることによって、妊娠する可能性が高まると考えています。
この検査では、お臍あたりに1cmぐらいの穴をあけてスコープ(鏡)を挿入し、その下あたりに5mmぐらいの穴を2個あけて、鉗子という細い金属性の棒を入れて、子宮や卵巣の周りを観察します。
棒の先には小さなはさみが付いていて、これで癒着を切ることができます。ものがつかめるように工夫してあるものもあります。また、先端まで穴が開いていて、滅菌水を通して、おなかの中を洗ったり、その水を回収したりします。電気を通して、子宮内膜症の病変を焼きながら治療することもできます。
小さな子宮内膜症病変や癒着は、腹腔鏡で実際に観察することで初めて発見できます。また、こうした病変が卵子の発育や排卵された卵子が卵管に入るのを邪魔していることがあるので、これを治療することで妊娠する可能性が高まります。
検査日は、月経の時期をさけるようにします。この検査の際に子宮より色のついた液を流すことによって、卵管の通過性も確認できるからです。
検査は入院して全身麻酔下で行い、短いと1時間以内ですみますが、病変の有無により長くなることもあります。入院は3日ほど必要ですが、これでうまくいくと自然妊娠も期待できます。
病変が見つかったときの治療も入院での全身麻酔下で行うため、入院施設のない不妊クリニックではこの検査をスキップして、タイミングや人工授精で妊娠しない場合に、すぐに体外受精を行うことも多くなっています。逆に、この検査をスキップして体外受精を行ってもなかなか妊娠しない場合に、検査で子宮内膜症を見つけて治療することで、卵子の質が上がって妊娠することもあります。
私どもは、35歳前の方でタイミングや人工授精をしてもなかなか妊娠しない場合は、積極的に腹腔鏡検査を提案しています。たとえこの検査で病変が見つからず、単におなかの中を洗うだけでも、検査後の妊娠率は体外受精の成績と比べてほぼ遜色ないからです。
なかなか妊娠しない場合は一度、腹腔鏡でおなかの中を検査されることをお勧めします。
引用元:
国立成育医療研究センターの不妊治療の特徴C (apital)