ホルモン療法薬「フルベストラント(一般名、商品名はフェソロデックス)」が効かない乳がんの目印となるタンパク質が、また1つ新たに同定された。

女性ホルモンで増えるがん細胞
 イタリアのプラト病院を中心とした研究グループが、2015年5月7日から9日までの期間にベルギーのブリュッセルで開催されたインパクト(IMPAKT)2015乳がん会議で発表した。

 およそ3分の2の乳がんは、女性ホルモンの影響を受けて増殖が促進される。そのようなタイプの乳がんの治療には「ホルモン療法薬」が使われる。がん細胞が女性ホルモンを利用できなくする薬だ。

効かなくなる「耐性」の問題
 ホルモン療法は、長く続けると薬が効かなくなり、再びがんが増えてしまう人も出てくる。この現象は、「がんが薬剤耐性を獲得した」という風に言われる。

 近年の医学の解析技術の進歩により、薬剤耐性に関わる可能性があるさまざまなタンパク質が見つかってきている。そのうちの1つに「エーピーツーガンマ(AP-2γ)」がある。AP-2γは、「転写因子」というタイプに分類されるタンパク質。さまざまな遺伝子の働きを調節する役割を持っている。

 今回研究グループは、乳がん細胞にAP-2γが存在するかどうかあらかじめ調べることで、ホルモン療法薬「フルベストラント」での治療効果を予測できるかどうか、検証を行った。

124人でAP-2γを検証
 検証は、「トランスコンファーム(TransCONFIRM)研究」に参加した、転移性乳がんの124人から切除して保存されていた乳がん組織を用いて行われた。この研究は、フルベストラントの最適な用量を調べるために以前行われたものだ。

 細胞の「核」という部分にAP-2γが存在するかどうかは「免疫組織化学的検査」という方法で調べた。同時に、女性ホルモンをがん細胞が利用するために必須のタンパク質となる「ki-67」「HER-2」が出ているかどうかも調べた。

乳がんタイプでばらつき
 乳がんのタイプによって、AP-2γが出ている「陽性」となる人の割合はばらついていた。

 乳がんの組織は「ザンクトガレン国際会議」で決定されたタイプに従って5つに分けている。

 「ルミナルA(管腔タイプで増殖が遅め)タイプ」は51人、「ルミナルB(管腔タイプで増殖が速め)+HER-2陰性タイプ」は50人、「ルミナルB+HER-2陽性タイプ」は11人、「トリプルネガティブ(女性ホルモンの受容体タンパク質3つが陰性)タイプ」は11人、「HER-2陽性タイプ」は2人だった。

 このうちAP-2γ陽性だったのは、ルミナルAタイプは29%、ルミナルB+HER-2陰性タイプは62%、ルミナルB+HER-2陽性タイプは90%、トリプルネガティブタイプは36%、HER-2陽性タイプは100%だった。

悪性度が高いほど
 悪性度別に見ると、グレード3の乳がんの76%、グレード1の乳がんの26.7%がAP-2γ陽性だった。さらに、ki-67陽性の乳がんの66%、ki-67陰性の乳がんの32%がAP-2γ陽性だった。

 悪性度が高いほど、AP-2γが出ている割合が多いという結果だ。

 フルベストラント治療が効いて、乳がんがもとより大きくならなかった期間(無増悪生存期間)をAP-2γの有無で比較した。結果、AP-2γ陽性の61人は平均5.4カ月、AP-2γ陰性の63人は平均9.6カ月だった。AP-2γが出ている乳がんの方が、無増悪生存期間が短いと分かった。

薬の効果を予測できるか
 今回の検証で、AP-2γが出ている乳がんでは、明らかにフルベストラントによる治療成績が悪いと分かった。したがって、AP-2γは、治療成績の予測に使える可能性がある。

 今後はAP-2γがホルモン療法薬の耐性になぜつながるのか、そのメカニズム解明を行う必要があると研究グループは述べている。

文献情報
Malorni L et al. IMPAKT 2015 News: AP-2gamma Tumour Expression Is a New Biomarker for Resistance to Endocrine Therapy in Patients with Metastatic Breast Cancer, EUROPEAN SOCIETY FOR MEDICAL ONCOLOGY, 2015 May 7. [E-pub ahead of print]





引用元:
ホルモン療法薬「フルベストラント」が効かない乳がん、目印となるタンパク質をまた1つ新たに同定(Medエッジ‎)