子どもの胃腸炎などを起こすロタウイルスはほぼすべての子どもが感染すると言われています。重症の場合は入院が必要になったり、死亡に至ることもあります。ワクチンには重症化を防ぐ効果があるとされますが、腸重積を増やすという説があります。シンガポールで、1歳未満で腸重積を起こした子どもは、ロタウイルスワクチン接種後7日以内だった割合が多かったことが報告されました。


◆シンガポールの1歳未満の子どもの例

研究班は、シンガポールの入院と予防接種のデータベースから、1歳未満の子どもが腸重積を発症した例を調べました。

腸重積とは、腸が隣り合った部分の中に入り込んでしまった状態のことで、腸の血流が遮られることなどにより、重症では手術が必要になったり、死亡に至ることもあります。



◆20例でワクチン接種

次の結果が得られました。


86人の乳児が腸重積で入院していた。20例は少なくとも1回の単価ロタウイルスワクチン接種を受けていた。そのうちほぼすべて(19例)が最初の接種を生後12週よりもあとで受けていた。最初の接種後1日から7日の期間の腸重積の齢調整相対発生率は8.36(95%信頼区間2.42-28.96)だった。ロタウイルスによるすべての小児の入院のうち、71%(570例)はワクチン接種率が90%だったと仮定すると予防しえたものと見られた。おおむね65,000人の乳児がワクチン接種を受けるごとに1人の腸重積が増えるものと見られた。

ロタウイルスワクチン接種を受けていた子どもが20例見つかりました。また、腸重積発症例は、ロタウイルスワクチン接種後1日から7日の期間だった場合が、ほかの期間に比べて多くなっていました。

研究班は「シンガポールでワクチン接種割合を高くするプログラムは、腸重積増加のリスクが低いときにのみ有益といえるだろう」と述べています。



ワクチン接種後で腸重積が多かったという計算には、腸重積を起こさなかった子どもの情報が入っておらず、腸重積を起こした子どもについての情報だけが元になっています。また、ワクチンを接種していた時期の偏りから、時期を選んで接種すると腸重積の発症率が変わることも想定しえます。そうした議論を通過することで、より有効なロタウイルス対策に向けて、何かの手がかりになるかもしれない報告です。


◆参照文献


Intussusception and Monovalent Rotavirus Vaccination in Singapore: Self-Controlled Case Series and Risk-Benefit Study.

J Pediatr. 2015 Jul


引用元:
ロタウイルスワクチンの副作用か?1歳未満の子どもの腸重積 シンガポールのケースシリーズ (MEDLEY)