読売中高生新聞7月3日号では、「働く女性」にフォーカスしている。

 7歳の男の子の母親であり、現在第2子を妊娠中の写真家・映画監督の蜷川実花さん(42)に話を聞いた。

 ――仕事、育児の魅力は? 

 私にとって表現することは最重要で、生きることそのもの。やりたいことを仕事にしているので、どんな大変なことでも幸せだ。

 一方で、自分の子供は圧倒的にかわいいし、母親であることは無条件に幸せなことだと知った。子育てが、仕事と同じくらい楽しくて驚いた。
 だから午後6時〜8時半は仕事を入れない。子供にご飯を食べさせ、宿題をみて、寝かしつける。まさか自分がこんなに教育熱心になるとは(笑)。週末も面白そうな展覧会やキャンプに一緒に出かけている。

 仕事で、子供とずっと一緒にいられないのはかわいそうだと感じるけど、それは自分の中で折り合いをつけるしかない。

 ――母親になって、仕事に変化はあったか。

 仕事と子供は切り離している。母親になって表現が優しくなるといったことは、まるでない。むしろ、整形手術を繰り返す芸能人を描いた映画「ヘルタースケルター」を監督するなど、エッジが利いてきた。

 ただ、育児との両立で仕事の効率はすごく上がった。移動の車の中で自分が受けたインタビュー記事をチェックして、次の撮影のスタッフを決めることも、海外ロケに行く飛行機の中で撮影の打ち合わせをすることもある。

 ――働く母親向けの雑誌「MAMA MARIA」を監修している。

 母親向けの雑誌はたくさんあるけど、メディアやSNSで配信されるのはキラキラした側面ばかり。母親は育児や家事など、あらゆる面で完璧を求められるので、これでは疲れてしまう。お母さんの愚痴が読める雑誌を作りたいと思った。

「仕事も子供も両方とる」…中学生の時に決意

 ――両立をあきらめてしまう女性も多い。
生きていくためにはお金が必要だ。だから、女性が経済的に自立することは大切だと思う。

 私の母親の世代は仕事か子供か、選ばなくてはいけなかった。その頃と比べたら女性が働きやすくなったはず。私は中学の時に「仕事も子供も両方とる」と決めた。フリーランスは出産や育児で1、2年休むと仕事が来なくなる可能性がある。ブランクがあっても仕事が来るような地位を、35歳までに築こうと思っていた。

 周りも子供がいても働く人ばかり。初めから「両立できない」とあきらめてしまうのは、もったいない。

 ――蜷川さんはどんな中高生だったか。

 父親(演出家の蜷川幸雄さん)からは「いいものをたくさん見なさい」と教わった。中学、高校では、あらゆる本、映画、絵画を片っ端から見た。

 絵画などビジュアル的なものよりも、むしろ本を読んでいたかもしれない。量を読むと、自分の好きなもの、嫌いなものが分かってくる。中高生はスポンジのようにたくさんのものを吸収できる。それが回り回って、今の仕事をする上でも血肉となっている。

 写真家になると決めたのは大学に入ってから。でも、小学生の頃からコンパクトカメラで写真を撮っていた。登山にバービー人形を持って行って、撮影していた。高校生のときに一眼レフを買って、日常風景などを撮るようになった。

アーティストへの近道はない…努力し続けて

 ――アーティストになりたい中高生にアドバイスを。

 大人になったら経済的な理由などであきらめなければならないこともあるが、中高生は好きなことに突き進めるのが特権。アーティストに限らず、各分野でトップになった人はみんな当たり前に努力している。近道はないので、努力し続けることが大事だ。


引用元:
子育て、仕事と同じくらい楽しい…蜷川実花さん